「税金払うのが当たり前なのに何で選挙権がないのが当たり前なの?」
平野次郎・フリーライター|2023年1月15日7:08AM
国会審議25年で実現せず
続いて近藤敦名城大学教授が「永住外国人の地方参政権」と題しオンライン講演。外国人参政権をめぐる歴史的経緯について次のように報告した。
1990年代に地方参政権を求める訴訟が相次いだ。95年2月の最高裁判決は憲法の国民主権原理を理由に訴えを退けたが「法律をもって、地方公共団体の長、その議会の議員等に対する選挙権を付与する措置を講ずることは、憲法上禁止されているものではない」と判示。国会にボールが投げられた。
98年10月、当時の民主党と公明党会派がそれぞれ永住外国人の地方選挙権についての法案を国会に初めて提出した。99年10月の自民、自由、公明3党連立政権の合意書は地方選挙権を「付与」する法律を成立させるとしていたが自民党内の反対が根強く、翌年1月に公明、自由両党だけで法案を提出。だが自由党が政権を離脱したため同年7月に政権内の保守、公明両党が法案を出した。民主党、共産党もそれぞれ法案を提出したが、すべて採決に至らなかった。2009年に民主、社民、国民新3党の連立政権が誕生し、民主党が政策として永住外国人地方参政権の早期実現を掲げたが、10年7月の参議院選挙で民主党が過半数割れとなり、その実現は遠のいた。
講演の中で近藤教授は「関東大震災のような有事の際に住民の安全を守るためには、常日頃から内外人の平等と協力を醸成する多文化共生に取り組む必要がある。外国人の地方選挙権はそのための重要な柱になる」と指摘した。
この後の意見交換では会場の在日コリアンから日本の「共生社会」のあり方を問う声が相次いだ。
「私たちが税金を払うのは当たり前なのに何で私たちに選挙権がないのが当たり前なのか。日本の国は私たちの何が怖くて選挙権を与えないのか」(60歳、女性)
「小学校の学級委員選挙以来、選挙をしたことがなく、選挙を迎える度に悔しい思いをしてきた。民主主義が壊れていく日本の社会に失望している」(68歳、男性)
「大阪都構想の住民投票で私たちの暮らす所がどうなるかわからないのに声を上げられなかった。共生や人権を言いながら、外国人は黙っとれという社会を日本人がおかしいと思わないことに危機感を抱く」(64歳、女性)
多民族共生人権教育センターの文公輝事務局長は「誰かが声を上げていかないと、もうあきらめてしまったということになってしまう。外国籍の人を排除したまま排除した人たちで政治をやっていく。それはだめだよと言い続けることが大事ではないか」と訴えた。
(『週刊金曜日』2023年1月13日号)