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産む産まないは自分で決める 緊急避妊薬&経口中絶薬の重大局面
神原里佳・ライター|2023年1月21日6:21AM
薬の普及阻む医師特権
一方、妊娠したが産むことを望まない場合に服用するのが経口中絶薬だ。1980年代に開発された経口中絶薬は世界80カ国以上で使用され、国際機関も推奨している。
しかし、日本の中絶手術は母体に危険のある「掻爬法」が主流。手術には10万~20万円以上かかり、パートナーの同意がなければ原則認められない。いまだに中絶は堕胎罪という刑法上の「罪」にあたり、手術も母体保護法指定医でなければ行なえない。英製薬会社が2021年12月、日本初の経口中絶薬の承認を求めて厚労省に申請したが、未承認のままだ。
23年1月9日には国際婦人年連絡会が「リプロダクティヴヘルス&ライツ~経口中絶薬の承認がもたらすもの」と題してオンラインセミナーを実施。中絶問題研究家の塚原久美さんが講演した。
塚原さんは「経口中絶薬の承認は時間の問題」と期待を寄せながらも、「承認されたとしても、今回の薬は日本では妊娠9週までしか利用が認められていない。日本産婦人科医会は入院させて指定医の監視下での服用を求めており、処方費用も10万円程度が相当だとしている。WHOの『中絶ケアガイドライン』では、経口中絶薬は正しい情報さえあれば患者が妊娠12週まで自宅で服用できる安全な薬として推奨しており、世界の平均原価は1000円もしないのに」と指摘する。
日本の医学会が経口中絶薬の普及を阻む背景として、塚原さんは「中絶が女性の健康を守る医療ではなくビジネスになっていること、医師の特権を守る法になっている」と問題視。
「日本の女性は医師と政府の主導で中絶への罪悪感を植え付けられ、女性たち自身の力を奪われてきた。でも、知識をもつことで変わっていける。『自分の身体は自分で決める』『中絶は自分の健康のために必要不可欠なこと』とポジティブに意識改革をしていくことが日本の女性にとって大切」と語り、経口中絶薬が入手・利用しやすい形で1日も早く承認されるよう、粘り強く交渉することが必要と訴えた。
(『週刊金曜日』2023年1月20日号)