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沖縄・高江への機動隊派遣の違法性問う住民訴訟は今

川名真理・雑誌編集者|2023年1月23日6:55AM

最高裁は主要論点に沈黙

 筆者は東京訴訟に原告として参加してきた。勝つのは難しいと言われてきた行政裁判だが、法廷では一貫して原告側が有利に見えた。

「地裁の裁判長は原告が申請した7人の証人を全員採用し、事実を究明する意欲は持っていたが、明らかになった事実を前にして腰くだけになった」と高木弁護士は振り返る。一審は米軍北部訓練場N1ゲート周辺に置かれた住民側のテントと車両を機動隊が強制撤去したことを「違法」とする画期的な判断を下したが「警視庁は違法な強制撤去をすることは“知らなかった”のだから派遣は『適法』」とした。しかし警視庁が本当に“知らなかった”のかどうかは法廷で議論もされていない。

 そこで二審で原告弁護団は、この点を明らかにするため高裁に当時の警視庁警備部長(証人尋問時は警視庁副総監)を証人申請し、採用された。証言の注目ポイントは二つ。一つは撤去を違法だとする一審判決に証人が一切反論しなかったこと。もう一つは警備部長が機動隊が沖縄で何をするか知らなかったと証言したことだ。にわかに信じがたいが、知らないとしたら、それこそ問題だ。証言は被告側に不利に働くように見えた。

 ところが高裁は警視庁警備部長の証言を踏まえた判決ではなく、これまでの議論の積み重ねを完全に無視した、ちゃぶ台返しの判決を出した。「被控訴人も争っていなかった強制撤去の違法性を覆したのには驚きました」と高木弁護士は言う。「『テントと車両の撤去は、違法ではないかもしれない』。だから『適法かもしれない』というのです。裁判所が『かもしれない』を根拠に判決を下すのはおかしい。明らかに憲法違反」。

 そこで原告弁護団は上告にあたり「高裁の判決は憲法違反ではないか」と最高裁に判断を求めた。また、名古屋高裁では高江でのテントや車両の強制撤去は「違法」と明確に判断していることから、東京高裁との矛盾を解消することも求めた。ところがその回答がノーコメントだったのだ。

 最高裁前での抗議集会では「積み重ねた議論が無視されたあげく何の判断もなく上告棄却されたのでは、何のために提訴したのかわからない。主権者としての尊厳が損なわれた気分だ」「これでは司法への信頼が損なわれる」など、怒りや失望、懸念の声が相次いだ。

 高江以降、各地の機動隊を沖縄へ送る動きはなくなった。愛知では名古屋高裁が機動隊派遣の手続きの違法性を認め(県知事側が上告)、一連の訴訟の希望となっている。愛知と沖縄の訴訟は継続中だ。この経験をいかに広げ、未来につなげるかが問われている。

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