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「休刊」を強いられる『週刊朝日』とは何だったのか!

本田雅和・編集部|2023年1月30日7:00AM

最近の『週刊朝日』。(撮影/本田雅和)

 創刊百年を超える、日本で最も長い歴史を持つ週刊誌『週刊朝日』が5月末で事実上の廃刊になる。発行元の朝日新聞出版の親会社=朝日新聞社が1月19日付の『朝日新聞』紙上で「休刊」を報じた。「週刊誌市場が縮小するなか、今後はウェブのニュースサイト」などに「より一層注力していく判断をした」と説明している。

 部数低迷が理由のような言いぶりだが、公表印刷部数は現在約7万部。同じ『朝日』系列の『AERA』が約5万部、やはり新聞社系週刊誌の草分け『サンデー毎日』の約3万部と比べてもよく健闘している。『AERA』を残して『週朝』を切る決定をした『朝日』経営陣の意図をいぶかる。筆者は1987年秋から4年間、同編集部に在籍。以下は幾分かの内情を知る者としての「極私的週刊誌ジャーナリズム論」である。

 私が朝日新聞社会部の若造としてサツ回りを始めた直後の87年秋、昭和天皇が侍医団からがんを疑われて開腹の大手術を受けた。この頃から各報道機関は、昭和天皇死去のXデーに向けた紙面作成に密かに取り組んでいた。

『朝日』が明治憲法下同様の「崩御」という言葉を見出しに準備しているのを知った私は連日のように社会部の幹部らに異を唱え、「天皇の戦争責任」を問う企画を提案していた。そんな最中に突如、部長から東銀座のバーに呼び出され、「『週朝』に行って柔らかい記事を書ける修行をしてこい」と編集局から出版局への異動を言い渡された。私にとっての認識は「飛ばされた」だった。

 着任するや意地の悪いデスクから「おい本田。オマエのような編集局から来た左翼は自分をジャーナリストだとか思っているようだが、俺たちは週刊誌の名刺を出すや水をかけられ、唾を吐かれてブンヤのクソと言われて取材してきた。下らんプライドは捨てろ」と罵倒され、当初は大嫌いなスポーツや芸能ニュースの取材ばかりを命じられた。確かに私のような編集局からのあぶれ者は出版局の生え抜きからは反発され、逆差別も受けたが、当時の『週朝』の空気は社会部よりもはるかに自由闊達、反権力、反権威だった。

 腐らずに芸能、スポーツ取材をこなすと「10本に1本」は部落差別や冤罪事件、環境問題など好きなテーマを執筆できた。昭和天皇が死去すると沖縄に飛んで、日の丸を焼いた知花昌一さんからチビチリガマの中で天皇制批判を聞くという企画を実現。同じ号で同僚は「歌舞音曲の自粛などどこ吹く風。『崩御の夜』はラブホテルとソープランドが大盛況だった」という帝都ルポを掲載していた。

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