『静岡新聞』3月末で夕刊廃止、デジタル拡充へ
亀松太郎・記者|2023年1月31日7:00AM
静岡県内を中心に約53万部を発行する『静岡新聞』は1月10日、3月末で夕刊を廃止すると発表した。購読料は月額3300円のまま据え置く。代わりに朝刊のページ数を増やしたり、購読者向けに新たなデジタルサービスを始めたりするなど、「現在の夕刊と同等以上の価値を提供する」という。
同紙は1951年から朝刊と夕刊の「セット販売」を続けてきた。だがメディアに対する読者のニーズが変化し、夕刊を廃止する新聞が相次ぐ中、地方紙では『中日新聞』『北海道新聞』に次ぐ発行部数を誇る同紙もついに撤退を決断した。背景について同紙は公式サイトで「デジタル端末でニュースに接する人が多くを占めるようになり、今後も拡大する見通し」だと説明し、「紙の朝刊と並びデジタルサービスを拡充させることに経営資源を集中させるため」夕刊の廃止を決めたとしている。
日本の一般紙の総発行部数は2012年に約4400万部だったが、この10年で急減。22年には約2900万部に落ち込んだ。一方、若者を中心にスマートフォンでニュースを知る人が増えている。
静岡新聞社の戦略は、そんな「紙からデジタルへ」という時代の流れに沿っている。同社の柳川実コーポレートマネジメント局長は「そうした人たちにサービスを提供するほうに力を向けていきたい」と語る。つまり「紙」の制作のリソースを削って「デジタル」に振り向けるという判断だ。
しかし同紙の新しいデジタルサービスはあくまで「紙の購読者」への付加サービスだという。デジタルに徹したサービスでない点は中途半端に見える。米『ニューヨーク・タイムズ』CEOは「20年以内に紙の印刷をやめているだろう」と20年に予測した。他方『静岡新聞』は「紙とデジタルの両方に全力で取り組む」(柳川局長)という。二兎を追う者は一兎をも得ず、にならなければいいのだが。
(『週刊金曜日』2023年1月27日号)