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G7広島サミットを前に 図書館問題で市民は置き去りか
佐藤和雄・編集部|2023年2月7日9:46AM
市議への公開質問 賛否は拮抗
さらに「市民の会」は、図書館問題に関心を持つ他の市民団体「鈴木三重吉『赤い鳥の会』」「原民喜『広島花幻忌の会』」「広島文学資料保全の会」とともに、広島市議会議員の全員に公開質問状を送った。賛成と回答したのは、松井市長と近いとされる会派「自由民主党・市民クラブ」(14人)など計15人。反対は、自民党ながら松井市長との間に距離があるとされる「自由民主党・保守クラブ」のうち3人や日本共産党(4人)など14人。「自由民主党・保守クラブ」の6人と公明党(8人)、市民連合(6人)などの21人は、市民団体側が再三、回答を促したが「無回答」だった。
広島市の強引とも映る進め方に対して、異論を唱えているのは市民団体ばかりではない。
地元の有力メディアである『中国新聞』も昨年12月26日、「中央図書館移転問題 こんな決め方でいいか」と題する社説を掲載し、「市民の疑問や懸念は解消できていないのに、広島市は計画を推し進めるつもりだろうか」「説明も議論も不十分なまま、市民の望まぬ結論を押し付けることを、市は避けなければならない」「A館を管理運営する市の第三セクター『広島駅南口開発』が苦境に陥っており、その救済のための移転ではないか。そんな疑念は深まる一方だ」などと厳しく批判している。
「こども図書館移転問題を考える市民の会」のメンバーとしてこれまでの広島市の対応をずっと見続けてきた吉田真佐枝さんは、次のように話している。
「広島市は、『エールエールA館が、利便性が良いから図書館機能をより発揮できる』という理由で、移転決定と発表していますが、利用者にとっては行きにくい場所です。第三セクターの広島駅南口開発株式会社の経営が厳しいので、その救済が本当の理由ではないでしょうか。広島市は、課題となっている『浅野文庫』の扱いや『こども図書館』の移転問題は切り離して、と場当たり的な説明をするのみで、重要な疑問に対していまだに何ひとつ答えていません。なぜ、現在立地している中央公園内で建て替えないのか。20年後、30年後にも続いていく広島の子どもたちや市民のために大事なものは何か、ということをきちんと考えて市政を行なってほしいと願っています」
(「週刊金曜日オンライン」独自コンテンツ)