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経口中絶薬はようやく承認へ 残る課題は?

岩崎眞美子・ライター|2023年2月11日7:00AM

「中絶は人権」の意識を

 薬の処方や値段に関しても懸念がある。たとえば、日本産婦人科医会の木下勝之会長(当時)は昨年メディアの取材に対し、薬の処方にかかる費用は従来の外科的手術と同等の10万円ほどが望ましいと答えている。だが、経口中絶薬の平均卸価格は800円弱。英国やフランスなど、妊娠・出産・中絶に関する費用が公的な保険ですべてまかなわれる国も少なくない中で、なぜ、従来の外科的手術と同様の価格設定になるのか。

 また今回の発表でも、メフィーゴパックは適切な使用体制が整うまでは「外来や入院で使用」されるとある。海外の例を見ると、特に新型コロナウイルス感染症の流行後は、オンラインで医師の診断と指導を受けて自宅で服用する例も珍しくなく、必ず病院で服用しなければならないわけでもない。

 昨年11月14日に「#もっと安全な中絶をアクション(ASAJ)」ほか41団体の賛同で行なわれた「セーフ・アボーション院内集会/行政交渉」では、「国際基準で使える経口中絶薬」を厚労省・法務省に求め、中絶薬の速やかな承認と適正価格化や、入院の義務づけをしないことなどを申し入れたほか、刑法堕胎罪・母体保護法の配偶者同意要件撤廃についても強く訴えた。

 WHOは、「中絶の犯罪化」や「第三者による中絶の承認」を法的に除かれるべき障壁としてあげている。性と生殖に関連する法や倫理研究を専門とする齋藤有紀子・北里大学医学部准教授は「中絶はヘルスケアであり人権なのだということを社会が共有すべき」と指摘。「妊娠した人を中心に据えて、自律した人として尊重する制度を今こそ構築すべきとき」と話す。

 堕胎罪が今も現存する日本で、薬による中絶がどう位置づけられるのか。母体保護法が義務づける配偶者同意がなぜ必要なのか。自分の身体なのに自己決定権を奪われている状況について、これを機会に考え直す必要がある。

 募集中のパブリックコメントは2月28日が提出締切。意見の入力はこちらから。

(『週刊金曜日』2023年2月10日号)


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