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何のための意見交換会? 終わらぬうちに「原発回帰」閣議決定とは 

満田夏花・FoE Japan事務局長|2023年2月20日7:00AM

運転期間の延長に反対する署名7万5214筆を提出する市民団体メンバー。(撮影/まさのあつこ)

 原発の運転期間延長を含むGX(グリーントランスフォーメーション=脱炭素社会に向けた取り組み)基本方針(以下、GX方針)が2月10日に閣議決定された。GX方針は昨年12月下旬からパブリック・コメント(一般からの意見の公募)にかけられており、3303件の意見が寄せられた。だが、これらの意見について公開の場で議論や検討が行なわれたわけではなく、GX方針に反映されたとはいいがたい。

 経済産業省は年明けから3月にかけて全国10カ所で「説明・意見交換会」を実施中である。しかし、3日に大阪で開催された意見交換会において「ここで出された意見はGX方針に反映されるのか」という参加者の問いに対して同省はこれを明確に否定。一体何のための意見交換会なのだろうか。

規制委で反対意見も

 今回のGX方針の閣議決定は、手続き的にも疑問だ。

 というのも8日に開催された原子力規制委員会で委員の一人が、原子炉等規制法から運転期間に関する規定を削除し、電気事業法に移すことに対する反対意見を述べたのだ。結局、この日決まるはずだった運転期間延長を前提とした規制制度は持ち越しとなった。

 反対意見を述べたのは石渡明委員。地質の専門家である同氏は「今回の変更は新たな知見などに基づくものではない。炉規法から運転期間の規定がなくなるという意味では安全規制の後退だ」「審査が長引くほど、その分だけ運転期間が延び、老朽化した原発が動くことになる」などとして反対した。

 規制委は昨年12月下旬から1カ月、原発運転期間延長を前提とした規制制度の案をパブコメにかけていた。寄せられた意見2016件の大半は、運転期間の延長に反対する内容だった。

 GX方針は運転期間延長に関して「原子力規制委員会による厳格な安全審査が行われることを前提に、一定の停止期間に限り、追加的な延長を認めることとする」としている。規制委の合意がない状況での閣議決定には無理がある。

7万5214の反対の声

 9日には「FoE Japan」など複数の市民団体が、経産省および原子力規制庁との意見交換会を開催。会の冒頭で、運転期間延長に反対する署名7万5214筆を提出した。

 署名では、原子炉の中性子照射による脆化に加え、運転停止中も時間の経過に伴いさまざまな部品が劣化すること、規制委の審査は電力会社の申請に基づくもので限界があることなどをあげ、「原子炉等規制法から、原発運転期間の規定を削除することは、福島原発事故から得た教訓を蔑ろに」するものだと訴える。

 主催団体の一つ、原子力規制を監視する市民の会の阪上武さんは「2012年当時の議論では、明らかに“安全規制”として運転期間を原則40年とする規定が原子炉等規制法に盛り込まれた。それを“利用政策”として、削除を容認するのは誤りである」と指摘する。

 その後行なわれた意見交換会では、GX方針によせられた意見の扱いが議論となった。「パブコメをどう検討するのか」という問いに関して経産省は「行政手続法に基づき、しっかりと検討する」と繰り返したが、具体的な回答は避けた。「なぜ意見交換会で出た意見をGX方針に反映しないのか」という問いに対しては「今後の政策の参考とする」と、閣議決定のスケジュールありきの意図をにじませた。

 会合に参加した「Fridays For Future Tokyo」の植田亮さんは、気候変動の観点からも原発は有効ではないと危惧する。「トラブルで原発が止まり、結局火力などを動かすことになるとしたら脱炭素に逆行。手続きとしても大筋が決まってからパブコメというのはアリバイ作りにしか見えない」。

 民意不在のまま強行されたGX方針の閣議決定。2月下旬には、原子炉等規制法から運転期間の規定を削除し、電気事業法に移すなどの改正案が閣議決定され、論戦の舞台は国会へと移る。

(『週刊金曜日』2023年2月23日号)

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