こんな国でサミットできるか! 性的少数者差別発言に怒る当事者たち
岩本太郎・編集部|2023年2月21日7:00AM
こともあろうに現首相が国会で同性婚制度に関して「(改正すると)社会が変わってしまう」と答弁し、さらにその秘書官が性的少数者(LGBTQ)について「見るのも嫌だ。隣に住んでいるのも嫌だ」と発言する(その後更迭された)という事態が起きた。3カ月後にはこの国が議長国としてG7サミット(先進7カ国首脳会議)を被爆地・広島で開こうとしているだけに、内外に波紋を広げた。
これを受けて、日本国内でこの問題に取り組んでいる当事者らが2月7日に東京の厚生労働省内で緊急記者会見を開催。一連の発言を批判し、5月のサミットまでに当事者への差別禁止や同性婚を認める規定等を盛り込んだ法整備を進めるよう政府に訴えた。共同で主催したのは、LGBT法連合会(※1)、国際人権NGO「ヒューマン・ライツ・ウォッチ」(以下、HRW)、Marriage For All Japan(以下MFAJ、※2)の3団体だ。
※1 一般社団法人性的指向および性自認等により困難を抱えている当事者等に対する法整備のための全国連合会 6
※2 公益社団法人「Marriage For All Japan ― 結婚の自由をすべての人に」
会見では、まずMFAJ理事の上杉崇子さんが「G7のうち同性カップルに対する法的保障が存在しないのは日本のみです」と指摘。さらに一連の政府内からの差別発言で「日本が性的少数者の人権を顧みない国であることが諸外国に知れわたった。こうした状況を放置したままでサミットの議長国に相応しいとは思えない」としたうえで、性的少数者の人権問題を専門に担当する首相補佐官の任命等、4項目を盛り込んだ要請書を6日付で岸田文雄首相あてに提出したことなどを明らかにした。
昨年6月にドイツのエルマウで開かれた前回のG7サミット後に発出された首脳コミュニケでは、「ジェンダー平等」の項目で「性自認、性表現あるいは性的指向に関係なく、誰もが同じ機会を得て、差別や暴力から保護されることを確保することへの我々の完全なコミットメントを再確認する」などの文言が盛り込まれ、日本政府も当然これに賛同している。つまり前記の実施は国際公約なのだ。
LGBT法連合会の事務局長・神谷悠一さんは、現在の米政権で運輸長官を務めるピート・ブティジェッジ氏が同性愛者であることを公言している件にも言及。もし同氏が今回のサミットの交通大臣会合に参加した場合、更迭された荒井勝喜氏のような「見るのも嫌だ」という秘書官がいる場で会議をやるのかと皮肉ったうえで「私たちは今回のG7に大変期待していた。その意味でも大変残念だ」と嘆いた。