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人権感覚が欠如した政権

宇都宮 健児|2023年2月24日7:00AM

 LGBTなど性的少数者や同性婚のあり方をめぐり「隣に住んでいたら嫌だ。見るのも嫌だ」「社会のあり方が変わる。秘書官室は全員反対で、私の身の回りも反対だ。同性婚導入となると社会のありようが変わってしまう。国を捨てる人、この国にはいたくないと言って反対する人は結構いる」などと発言した荒井勝喜首相秘書官を、岸田文雄首相は2月4日更迭した。

 岸田首相は、荒井首相秘書官の更迭理由に関し、「多様性を尊重し包摂的な社会を実現していくとする内閣の考え方にそぐわない、言語道断の発言だ」と説明した。

 岸田政権下では、昨年12月、月刊誌への寄稿やブログで「LGBTカップルには生産性がない」などと表現していた杉田水脈総務政務官が更迭されている。しかしながら岸田首相が杉田衆院議員を総務政務官に任命した昨年8月時点では、杉田衆院議員のLGBTに対する差別表現は既に大きな問題になっていたのであり、このような議員を総務政務官に任命した岸田首相自身の人権感覚が問われる任命であったといえる。

 岸田首相は2月1日の衆院予算委員会での答弁で、同性婚の法制化に関し「極めて慎重に検討すべき課題だ。こうした制度を改正することになると、日本の国民すべてが大きな関わりを持つことになる。社会が変わっていく問題である。すべての国民にとっても家族観や価値観、社会が変わってしまう課題だ」と極めて後ろ向きな答弁をしている。

 今年5月には広島で日本が議長国を務める主要7カ国首脳会議(G7サミット)が開かれることになっているが、G7の中で国の制度として同性婚を認める制度も同性カップルを支援するパートナーシップ制度もない国は日本だけである。

 日本の人権状況について審査を行なった国連の人権理事会は2月3日、日本政府に対するさまざまな勧告が盛り込まれた報告書を採択している。この報告書の中で同理事会は、日本政府に対し性的少数者に対する差別の解消や同性婚の合法化を勧告している。

 岸田首相は、「多様性を尊重し包摂的な社会の実現」などとお題目を唱えるのではなく、本当にこのような社会を実現しようと思うのであれば、性的少数者の人権を守るための差別禁止や同性婚を認める法整備に早急に取り組むべきである。

(『週刊金曜日』2023年2月17日号)

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