赤ペン裁判官”に怒り心頭 東住吉冤罪国賠訴訟の控訴審判決
粟野仁雄・ジャーナリスト|2023年2月28日7:00AM
つぎはぎ判決を生む土壌
判決後の記者会見で、「こんな判決文が認められるのですか」と問うた筆者に対し、弁護団の塩野隆史弁護士は「貸金などの軽い内容の事案ならなくはないですが、検察官の違法性を問う重要な裁判でのこんな判決文は驚きです」と話した。
これについて「つぎはぎ判決文といわれる古くて新しい問題です」と次のように解説してくれたのは、元裁判官で「市民にオープンな裁判」の活動に取り組む森野俊彦弁護士(大阪弁護士会)だ。
「最高裁の泉徳治判事が2006年、控訴審の判決文のあり方について『つぎはぎではわからない。その判決文を読んだだけで内容がわかるようにすべき』と提言したものの、今も徹底されていません。一審判決が長大な時などは引用も大変ですが、私はパソコンもない時代に手書きで写したものです。こんな判決文では青木さんが怒るのも当然。これだけの事件だし、高裁も何か工夫すべきでしょう」
ただ、控訴審でも検察官の違法性が否定されたことについては、森野弁護士は「再審無罪になった人が起こした民事裁判で、それが認められたのは布川事件くらい。現状ではなかなか難しい」とした。
大阪弁護士会のベテラン弁護士は「事件番号と判決日からして、きわめて短い間でほとんど審理せずさっさと書面審査を終えただけの門前払いとわかる。一般に警察の違法が問われることはあるが、検察の違法性はまず問われない。判検交流で裁判官が検察官の肩を持つ例も多く、牧氏は大阪高裁で部総括というポジションにいる。高裁ではむしろこうした書面審理だけの裁判官が出世している」と明かす。熟慮の末の同じ結果ならともかく、そんな様子が露ほどもうかがえないこの判決に対して、青木さんは上告を決めている。
(『週刊金曜日』2023年2月24日号)