「生涯弁護士活動しないで」 セクハラ対策弁護士からセクハラ被害と提訴
小川たまか・ライター|2023年3月11日1:16PM
上下関係で逃げ道ふさぐ
訴状によれば、馬奈木氏から知乃さんへ同意のない身体的接触は19年9月に始まり、その後月に8回ほどのペースで観劇と飲食に連れ出されることがあった。知乃さんは日記に「馬奈木さんは私の厄介オタクみたいになってる」と書くなど(21年10月21日)、代理人のはずの馬奈木氏との距離感に悩む心境をたびたび綴った。Y氏との裁判が始まると馬奈木氏からの呼び出しはさらに頻繁になり「裁判の打ち合わせ」の名目で居酒屋などで飲食することが続いた。
21年12月には同意のないキス行為があり、その後「入浴中の写真とか送ってくれてもいいよ」など性的なLINEが届くようになった。知乃さんは拒むと馬奈木氏の機嫌が悪くなることから何とか代理人を続けてもらえるように「本当にごめんなさい」「馬奈木さんにまだまだ一緒に仕事してほしいから全部上手くやります、怒らないで」といったLINEを送ることもあった。22年1月にはラブホテルに行くことを承諾させられ、ホテルで不本意な性交があった。翌月、知乃さんが馬奈木氏を拒絶すると馬奈木氏から深夜に「軽く見られてたのかなあ、結局」など怒りを感じさせるLINEが連続して届き、これをきっかけに「なくす会」は馬奈木氏を解任した。
記者会見で知乃さんの代理人を務める佐藤倫子弁護士は「エントラップメント型」のハラスメントだと指摘。エントラップメント型ハラスメントとは日常生活の中で上下関係を作り上げ逃げ道をふさぎ、その上で徐々に性的な話題を持ち出すなどして最終的に性的行為に及ぶ「最も典型的な不同意性交の発生プロセス」と言われる。
知乃さんは、これまでは顔を出して会見に臨んできたが、今回はそうしなかった理由について「なぜ被害者の顔ばかり報道されるのか、ずっと疑問に思っていたのを自分の中でも許していたので変わるべきではないかと思い、顔出しをしないことにしました」「世間に認知されるべきは加害者の顔」と話した。また「(弁護士会からの)除名や、生涯弁護士として活動しないことを求めたい」「私は悲しんでいるとかはありません。非常に怒っています」と訴えた。
馬奈木氏は会見2日前の1日にネット上で謝罪文を公開。拒むメッセージを受け取っていたにもかかわらず「自らの都合のよい方向に解釈し、性的関係を迫る言動を続け」たことなどを認めている。
(『週刊金曜日』2023年3月10日号)