差別発言が何度続けば差別撤廃の法制化は実現するのか 性的マイノリティの子を持つ親たちの声
小川たまか・ライター|2023年3月20日7:00AM
「批判回避」狙いの法案?
2021年5月に超党派議連が合意した「LGBT理解増進法案」については「行き過ぎた差別禁止に繋がる」などの批判が出たことから国会提出が見送られた経緯があった。その際、当事者らからは「本来求めているのは差別撤廃だが、理解増進でさえ通らないのか」との声が上がっていた。
今回、荒井発言により世論の批判が高まり、海外メディアからも日本がG7(主要7カ国)で唯一、同性婚を認めない国であることが批判された。そうした中で同法案の再検討が報道されるようになった背景には、海外からの批判をかわす狙いや、法案の名称から現在ある差別から目を背けようとする思惑もあるのでは、との見方もある。オンライン記者会見に出席した親たちは、政府に提出予定の「性的マイノリティの子どもたちの命を守る法整備を求める要望書」でも「まず法律で『差別はダメ』と明確に示し、その上で、当事者の子を持つ親や保護者をはじめ、社会全体に対して理解を広げていくことが必要ではないでしょうか」と訴えている。
18年の杉田水脈・衆議院議員の「生産性がない」発言など、議員による差別発言も今なお繰り返されている。
オンライン会見を主催した一般社団法人「fair」の松岡宗嗣代表理事は、「杉田発言以降、性的マイノリティへの社会の関心が高まり、政治家の差別発言が報じられるケースも増え、発言を問題だとする社会の反応も大きくなった。同性婚や差別禁止法の整備に対する世論の賛成の割合も高い」と語る。だが一方で松岡代表理事は、それらについて「積極的な賛成ではなく『自分には関係ないから賛成』という人が多いのが実態ではないか」とも分析。「世論の多くが賛成ではあるけれど、それがたとえば選挙における投票行動にはなかなか影響しなかったりする、という点はあるのかなと思っています」とも話す。確かに、同性婚の法制化に反対する自民党は選挙で多くの議席を獲得し続けている。
政治家の問題発言が何度続けば差別撤廃はかなうのか。前記要望書は近日中に小倉將信・男女共同参画担当大臣に提出される予定だ。
(『週刊金曜日』2023年3月17日号)