朝鮮人虐殺に言及した映像の上映中止 東京都は調査と謝罪を
北野隆一・『朝日新聞』編集委員|2023年3月25日6:39AM
「小池知事への忖度が」
飯山さんは面会終了後に記者会見。「人権部の対応の背景には小池知事への忖度がある。知事の態度が職員に内面化され、朝鮮人虐殺がないかのように振る舞うことが正しいことになってしまった。知事は態度を省みてほしい」と述べ、小池知事にも要望書を提出する考えを示した。
2月21日の都議会本会議では、共産党の戸谷英津子都議が代表質問の冒頭、関東大震災時の朝鮮人虐殺について尋ねた。都が刊行した『東京百年史』で朝鮮人の惨殺を「震災とは別の人災」と認め「東京の歴史の拭うことのできない汚点である」と記されていると指摘し、見解をただした。小池知事は「さまざまな内容が史実として書かれていると承知している。何が明白な事実かについては、歴史家がひもとくものだ」と述べ、虐殺の有無について明確な認識を示さない従来の答弁を繰り返した。
この知事答弁について飯山さんは「すでにひもとかれている事実を、なかったかのように言うことで、事実を証言した人や調査・研究した人たちの営みをないがしろにしてしまう発言だ」と批判した。
飯山さんとの面会後、都の人権担当の幹部職員は『朝日新聞』記者の取材に「現時点で作品の上映は考えていない。要望をよく読んで対応を考える」と回答。飯山さんらに経緯の説明を直接していないことについては「飯山さんと主催者の都人権啓発センターがやり取りを重ねて契約に至っており、十分説明をしていた」と答えた。
(『週刊金曜日』2023年3月24日号)