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マイナンバー訴訟、最高裁はプライバシー権認めず
すべての高裁判決待たず判断

稲垣美穂子・フリーランスライター|2023年3月26日6:56AM

判決後の報告集会で発言する福岡訴訟原告の岸誠之助さん(中央)。3月9日、東京都千代田区で。(撮影/稲垣美穂子)

 マイナンバー制度は憲法13条が保障する自己情報コントロール権(プライバシー権)を侵害するとして2015年以降、各地の住民らが国に個人番号の利用差し止めなどを求めた訴訟で最高裁が初の判断を下した。第1小法廷(深山卓也裁判長)は全国8カ所で起こされた訴訟中3件(仙台、福岡、名古屋の各高裁。いずれも原告敗訴で上告)につき弁論を開かないまま3月9日に上告を棄却した。

 この判決について原告側では、福岡訴訟の武藤糾明弁護士が「原告らの懸念を正当と認めた上で、本制度が対象を3分野に限定すると明言したことは、昨今の政府の無限定な番号利用の拡大を十分牽制する意義深い判決」と評価。名古屋訴訟の加藤光宏弁護士は、マイナンバー利用範囲拡大に一応の歯止めをかけている点は評価しつつ「名古屋高裁判決では憲法13条が保障する内容に『個人情報をみだりに収集、利用、開示又は公表されない自由』があるとしたが、最高裁はそこに一切触れず『開示・公表されない自由』にとどめた。同制度の前身である住基ネットに関する15年前の最高裁判決の『漏れなければいい』という認識から少しも進んでいない」と批判した。

 福岡訴訟原告の岸誠之助さんは「個人の自己決定の権利より行政の効率化が優先されるのはおかしい。法律が想定していないことを後から政令や省令で追加できたらやりたい放題では」と述べた。

 東京、金沢、神奈川では各高裁の判決言い渡し日がまだ決まっていない。そうした中での最高裁判決に、神奈川訴訟の小賀坂徹弁護団代表は「非常にショック。影響は免れない」と語った。

 政府は3月7日、税や社会保障、災害対策以外の行政事務でも法改正を必要とせず省令見直しのみでマイナンバー利用範囲拡大を可能とすることを閣議決定した。この最高裁判決を本当に「歯止め」にできるかは私たちにかかっている。

(『週刊金曜日』2023年3月24日号)

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