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「日本にも正義があった」 孤立出産の元技能実習生・リンさんが逆転無罪に
神原里佳・ライター|2023年4月2日8:56AM
2020年に熊本県芦北町で孤立出産(死産)した元技能実習生が死体遺棄の罪に問われた事件の上告審で3月24日、最高裁は一審、二審の有罪判決を取り消し、無罪を言い渡した。傍聴席に支援者らの安堵のため息が広がった。
技能実習生として18年にベトナムから来日したレー・ティ・トゥイ・リンさん(24歳)は、みかん農家で働いている時に妊娠したが、誰にも相談できず、自宅で孤立死産してしまう。死産した双子の遺体をタオルでくるみ、二重の段ボールに入れて封をし、棚に置いてひと晩過ごした行為を検察側は「遺体を埋めて隠すつもりだった」と主張。一審の熊本地裁、二審の福岡高裁でいずれも執行猶予つきの有罪判決が下っていた(本誌3月10日号で詳報)。
この裁判ではリンさんが死産後にとった行動が刑法第190条の「死体遺棄」にあたるかどうかが争点となった。24日の判決で、草野耕一裁判長は「死体遺棄とは習俗上の埋葬とは認められない態様で死体等を放棄し、または隠匿する行為」とし、リンさんの行為は「他者が死体を発見することが困難な状況を作出したが、それが行なわれた場所や設置の方法等に照らすと、習俗上の埋葬等と相いれない処置とは認められない」と判断。原判決は「遺棄」について解釈を誤り、重大な事実誤認があったとして逆転無罪を言い渡した。
判決後、最高裁正門前でマイクを握った「コムスタカ―外国人と共に生きる会」の中島眞一郎代表は「いろいろな運動が負けて終わることが多いが、日本にも正義があった」と喜びをあらわにした。
「一審から言い続けてきた主張を最高裁が真正面から認めてくれた。孤立出産に追い込まれたすべての母親の行動が罪に問われることがあってはならないというメッセージを感じる判決だった」
司法記者クラブでの会見などで、弁護団は判決を高く評価するとコメント。リンさんもオンラインで「心から嬉しい。妊娠して悩んでいる技能実習生に刑罰を加えるのではなく、保護される日本社会に変わってほしい」と明るい声で語った。
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