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「日本にも正義があった」 孤立出産の元技能実習生・リンさんが逆転無罪に

神原里佳・ライター|2023年4月2日8:56AM

技能実習制度自体に問題

 今回、無罪判決を得た要因の一つとして、主任弁護人の石黒大貴弁護士は最高裁に提出した一般からの意見書の存在を挙げている。ウェブで募集した意見書には妊娠・出産を経験した女性らから127通のリアルな声が寄せられた。この意見書募集を提案したのが、22年1月に最高裁で逆転無罪となったコインハイブ事件(※)の主任弁護人、平野敬弁護士だ。平野弁護士はリンさんの裁判でも弁護団に加わり、コインハイブ事件当事者の諸井聖也さんがウェブサイト制作などで協力したという。

※ウェブデザイナーの諸井さんがサイト上に設けた「コインハイブ」(管理者が暗号資産で利益を得るサービス)をめぐり処分を受けた事件。19年の一審では無罪、20年の二審では有罪判決。

 リンさんの事件は外国人技能実習制度や外国人差別、婚外妊娠や孤立出産に追い込まれる女性への偏見や冷遇など、日本社会にある多くの課題を浮き彫りにした。支援団体の「移住者と連帯する全国ネットワーク」の鳥井一平氏は、家族帯同や移住などの自由がなく、海外から批判も多い技能実習制度そのものについて「廃止すべき」と強く批判。「妊娠・出産で不当な扱いを受けて泣き寝入りしたり、傷ついて帰国したりする実習生は後を絶たない。外国人労働者は加害者ではなく被害者。今日の無罪判決を今後の日本社会に生かしてほしい」と訴えた。

 また、コムスタカの中島代表はマスコミの報道姿勢にも苦言を呈した。リンさんは今回、熊本から最高裁の判決を聞きに来ることはなく、会見にもオンラインでしか参加しなかった。逮捕時にマスコミが押し寄せ、犯罪者として実名で大々的に報道されたことが強いトラウマになっていたからだ。会見でも「ニュースやSNS上で嫌なことが書き込まれて、それらを見るたびに、心が苦しめられ、心が折れかけました」と語っている。裁判は終わったが、リンさんの心と名誉は傷ついたままだ。中島代表は報道陣に「警察発表をそのまま鵜呑みにして流すのではなく、実名報道の基準についても見直しをしてほしい」と求めた。

(『週刊金曜日』2023年3月31日号)

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