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関西電力原発運転差し止め訴訟で西尾漠氏が証言
「核燃料サイクルは破綻」「廃棄物処理の展望なし」
瓜生昌弘(福井原発訴訟〔滋賀〕を支える会事務局長)|2023年4月5日7:00AM
福井県にある関西電力の原発7基の運転差し止めを求めた裁判の第36回口頭弁論が3月9日、大津地裁(堀部亮一裁判長)で行なわれた。原告側が予定している5人の証人の三番手として、原子力資料情報室共同代表の西尾漠氏が放射性廃棄物問題について証言した。
原告側主尋問に対して西尾氏は、核燃料サイクルが完全に破綻し、原発の運転に伴って発生している大量の放射性廃棄物が行き場を失っており、将来的に打開できる展望がないことなどを証言した。
関電側も反対尋問を行なったが、展望のないまま事業が進められてきたことは動かしようのない事実であり、西尾氏の証言内容を否定することはできず、予定した時間の半分以下で尋問は終了した。
西尾氏の証言内容を要約すると、主要な主張は下記の7点となる。
・核燃料サイクルが行き詰っており、使用済核燃料がたまる。
・稼働すればするほど低レベル廃棄物が大量にでる。
・関電は中間貯蔵施設を確保して外にだすといっているが、その見通しはない。
・核燃料サイクルを少しでも回そうとすると、再処理で発生する高レベル廃棄物の行き場がない。最初の海洋投棄という考えから地層処分へと変わってきたが、10万年もの間安全なところがあるのか。
・プルトニウムを利用する高速(増殖)炉はできず、仕方がないのでプルサーマルでプルトニウムを燃やそうとしているが、プルサーマルをやっている原発はわずかしかなく、プルサーマル政策はうまくいかない。しかも、MOX(混合酸化物)燃料はウラン燃料の10倍も費用がかかり、経済的にみて得策でない。
・全国で24基の廃炉が決まっているが、大量にでる廃棄物の行き場がない。放射性でない廃棄物も多いが、原発の廃棄物を誰が引き受けるのか。
・結局、原発をつくるときに廃棄物をどうするかということを真剣に考えなかったし、稼働中もいつかなんとかなるということでこの間すすめてきた。
西尾氏の証言から、放射性廃棄物問題が原子力政策の無責任さの象徴であり、災害リスクとならんで原発の最大のネックであることが明瞭になった。
次回6月15日の口頭弁論期日では、裁判長交代に伴い、原告被告双方がこれまでの主張をまとめてプレゼンテーションを行なう。このため、4人目の証人の芦田譲京都大学名誉教授の証言は9月に、最後の証人の赤松純平氏は12月となった。
(『週刊金曜日』2023年3月31日号)