市民メディア全国交流集会「メディフェス」4年ぶりに開催
若者ら参加、新機軸で活性化
岩本太郎・編集部|2023年4月12日7:00AM
ハイパーローカル絶好調
たとえば初日に出演した、仙台拠点のヒップホップユニットのMC、HUNGERさんは、震災の記憶をラップで表現し、それを映像を通じてネット上でも発信中。続くセッション「継承・伝承のカタチ」では広島(被爆)、神戸(阪神・淡路大震災)、仙台の各地域にて災禍の記録を伝えるプロジェクトに関わる人々が登壇。歳月を重ね世代交代も進む中で風化していく記憶を後世にどう語り継ぐべきかをめぐり意見交換がなされた。
2日目午前のセッション「地域の新たな発信の形・ハイパーローカル」では、住民参加型ニュースサイト「TOHOKU360」編集長で、今回のメディフェス実行委員長を務めた安藤歩美さんらが登壇。途中で福岡県東峰村のケーブルテレビ局「とうほうTV」で生放送中の住民参加型番組の出演者の方々も、同時刻に仙台で進行中のセッションにネット画面を通じて“相互乗り入れ”で参加した。ネット局「みらクルTV」出演者、全盲のシンガーソングライター・大石亜矢子さんは、視聴者に話を聞いたその場で相手のテーマ曲を即興で作りピアノで弾き語りする離れ業を会場でも実演。
他にもフリーランスライターの畠山理仁さんの基調講演、元新聞記者のVチューバーでメタバース(仮想空間)アイドルの蘭茶みすみさん、地元の元気なウェブメディア「ウラロジ仙台」による「誰でもメディア」の実践報告など2日間の全内容を記録した映像は公式サイト(※)で公開中だ。
なお、次回メディフェスの開催地や時期は未定だが、近々関係者間で協議が始まる見込みである。
前述の通り初期メディフェスはメディアと言えばマスメディアしかなかった時代に「いかにそこで市民の発信の場を確保するか」が大きなテーマだった。ところが今や「誰でもメディア」の時代が到来。今回の仙台集会のテーマが「伝わらない、伝える、伝わる。」だったように、そうした環境下にあって災害記憶の風化や世代間の断絶、マイノリティの孤立化など、むしろ「メディアはたくさんあるのにメッセージが伝わらない」という今の状況を、新しいメディア活用、さまざまな分野で活躍する人々(特に若者たち)の参加などを通じていかに克服していくかが今後の市民メディアの大きな課題だろう。その点さえ共有できればメディフェスはたぶんこれからも無理せず楽しく続けていけるのではなかろうか。
(『週刊金曜日』2023年4月7日号)
※「メディフェスせんだい2023」公式サイト=https://note.com/mediafes2023
全プログラムの記録映像はhttps://www.youtube.com/watch?v=jSSHeMADpY0ほかで公開中。