考えるタネがここにある

週刊金曜日オンライン

  • YouTube
  • Twitter
  • Facebook

「生きていく中で良いことなんか一度もなかった」
貧困の現場で格闘する若者たちが討論会

竪場勝司・ライター|2023年4月16日7:00AM

「私に何かできる?」

 親による虐待を受けたことから児童養護施設で生活していた阿部さんは18歳になって就職したが、時給300円という長時間労働の職場だった。こうした経験をもとに「相談窓口に行けない人を対象にした組織があったら」と思って立ち上げたのが焚き火の取り組み。「自分が好きだから継続できる」と思ったのが焚き火を選んだ理由で、自分とつながりを持つ、いろいろな世代の人が参加している。阿部さんは「地域で活動する人たちを増やしていくことで、制度の狭間にこぼれ落ちてしまう人を少しでも減らせるのでは」と活動にかける思いを語った。

 幸田さんが所属するTENOHASIは都内の池袋を拠点とする団体で、生活相談、炊き出し、シェルターの運営などを行なっている。毎月2回の炊き出しでは、会場の公園に集まってきた人たちに弁当を配り、医療相談なども実施している。「コロナ禍で利用者が急増し、公園の外にも人があふれている状況だ。埼玉県や茨城県から来ている人も多い」と現状を報告した。

 仮放免の高校生だった経験を持つミラクルさんは「高校生の時、NHKの番組に出るまでは入管の問題を口にすることが『悪』だと思っていた。でも番組に出た途端に先輩などから『何で言わなかったの』という意外なリアクションが来た。大学生になってからはインスタグラムで入管関連のことをシェアしたりしているが、友達から『私に何かできることない?』と聞かれたりする。学校でも入管の話をした方がいいと考え、今は学部の先生に私の講演会をやってほしいと要請している」と話した。

 司会者からの「社会の状況に対して若者の世代はどう捉えているのか」との問いかけに荒井さんは「運動にぶつけられるエネルギーがないのだろうと、現場の若者たちを見ていて感じる。誰かが寄り添い、一つひとつ何かを一緒にやることによって、少しずつ自分の人生に多少の可能性や光が見えてくる。地道な寄り添いをしていくことを積み重ねていかないと、社会を動かす力は若者たちから出てこない」と答えていた。

(『週刊金曜日』2023年4月14日号)

●この記事をシェアする

  • facebook
  • twitter
  • Hatena
  • google+
  • Line

電子版をアプリで読む

  • Download on the App Store
  • Google Playで手に入れよう

金曜日ちゃんねる

おすすめ書籍

書影

増補版 ひとめでわかる のんではいけない薬大事典

浜 六郎

発売日:2024/05/17

定価:2500円+税

書影

エシカルに暮らすための12条 地球市民として生きる知恵

古沢広祐(ふるさわ・こうゆう)

発売日:2019/07/29

上へ