これでいいのか徴用工解決策
韓国の被害者、世論はどう見ているのか?
金 銀 智(キム・ウンジ)・『時事IN』記者|2023年4月19日5:20PM
今回の韓国政府の「解決策」について韓国の被害者、世論はどう見ているのか? 本誌と提携する韓国の時事週刊誌『時事IN』3月11日号に掲載された記事を紹介する。
まさかとは思っていたが、やはり、と言うべきだろう。3月6日、尹政権は「強制動員判決解決策」を発表したが、2カ月前に韓国外務省が公開討論会で明らかにした案から一歩も踏み出していない内容だった。
政府最終案の要点は、韓国側財団(行政安全部傘下の日帝強制動員被害者支援財団)が日帝強制動員被害者に対して金銭を支払うということだ。鉄鋼大手のポスコ(POSCO)など、1965年の韓日請求権協定で恩恵を受けた韓国企業が自発的に拠出した資金で基金をつくる予定だ。つまり、この問題を債権・債務関係のような金銭問題に狭小化して終止符を打とうとする計画だ。
韓国政府が明らかにした「第三者弁済」「代位弁済」「併存的債務引受」といった耳慣れない法律用語がちりばめられた1行が意味するところは明確だ。この問題の発端である日本の存在が、すっぽり抜け落ちているという事実だ。つまり、日本企業の基金参加は明記されていないのである。
2018年の韓国最高裁判決は、日帝強占期(日本の植民地期)に朝鮮人を動員して強制労働させた日本企業の責任を明示した。反人道的な不法行為に対する慰謝料を被害者に支払うべきだという決定だった。
「支持率が1パーセントになろうが」
だが、日本の反発で問題は足踏み状態に陥った。これまで日本は、植民地支配の違法性や、朝鮮人労働者と「慰安婦」の強制動員の事実を明確に認めたことはない。韓国最高裁判決も国際法違反だというのが日本側の主張だ。1965年の韓日請求権協定で韓国に「独立祝賀金」名目で資金を提供した以上、個人に請求権はないという理屈である。
韓国政府案が発表された3月6日、岸田(文雄)首相は「1998年10月に発表された日韓共同宣言(小渕恵三首相と金大中大統領が署名)を含め、歴史認識に関する歴代内閣の立場を全体として引き継いでいるというのが日本政府の立場」だと述べた。
だが「歴代内閣の立場」には、強制動員問題はすでに解決済みと主張した安倍(晋三)元首相の時期も含まれているため、この発言は強制動員に対する日本の謝罪とは見なし難い。韓国の全国経済人連合会(全経連)と日本の経団連が「未来パートナーシップ基金」を共同で創設する案を検討するというが、これも日本の被告企業(三菱重工業や日本製鉄)が参加するかどうかは不透明だ。
このような状況で韓国政府が解決策を発表した理由について、朴振外相は3月6日、次のように明らかにした。「政府は最近の厳しい韓半島および地域・国際情勢の中で自由民主主義、市場経済、法治、人権という普遍的価値を共有する最も近い隣国である日本とともに、韓日両国の共同利益と地域および世界の平和繁栄のために努力していくことを願う」
尹錫悦大統領も同日、「多くの困難の中でも強制徴用判決問題の解決法を発表したのは、未来志向の韓日関係に進むための決断だ」と自画自賛した。「支持率が1パーセントになろうが、やるべきことはやる」「どうせやるのなら、来年の総選挙を前にしてやるより、いまのうちに叩かれた方がいい」という尹大統領の談話が、「関係者」への取材を通じて報じられた。