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これでいいのか徴用工解決策
韓国の被害者、世論はどう見ているのか? 

金 銀 智(キム・ウンジ)・『時事IN』記者|2023年4月19日5:20PM

「物乞いするような金は受け取らない」

 何よりも強制動員の被害者本人が反発している。18年最高裁判決の原告のうち存命の3人(梁錦徳、金性珠、李春植の各氏)全員が明確に政府案に反対の意を表明した。政府の最終発表を聞いた梁錦徳氏は「物乞いするような金は受け取らない」として、こう続けた。「過ちを犯した人、謝罪すべき人がちゃんといるのに、(このように)解決してはならない。老人だからといって軽く見てはいけない。必ず(日本が)まず謝罪をしてから、他のことを解決すべきだ」

日本による強制動員被害者、梁錦徳(左)、金性珠両氏が3月7日、記者会見の場で発言している。(撮影/李明益

 尹政権関係者らは最高裁判決に対してもしばしば否定的見解を示しているが、これは政権の「法治」に対する姿勢にも疑問を抱かせるものだ。3月6日の政府解決策の発表後、ある大統領室関係者がこんな発言をしている。「我々としては最高裁判決を否定する理由は何もないが、ともかく国際法的に、そして1965年の韓日両国政府の約束に照らして、2018年の最高裁判決は日本からしたら韓国が合意を破ったというのが結論だ」

 韓悳洙首相も同様の発言をしている。昨年9月28日、安倍元首相の国葬出席のために訪日した韓首相は記者たちに「国際法的に見れば、一般的に理解し難いことが起こったのは事実であり、そのせいで韓国の信頼性が傷ついたのも事実だ」と語った。

 だが、この話は正確ではない。この判決は12年に最高裁1部(金能煥裁判長)で破棄差し戻しした後、18年に最高裁全員合意体で確定した判決だ。その間には梁承泰前最高裁長官の職権乱用問題があった。当時、梁氏は朴槿恵政権からの要請を受け強制動員訴訟を遅延させ、結果を覆そうとしたという疑いだ。その対価として上告裁判所の設置と判事の海外派遣拡大などを求めたとされる。この事件の捜査指揮にあたったのが、今の尹大統領だ。

 さらに判決に対して政府関係者が表立って否定的反応を示したことで、結果的に韓国の交渉力までそぎ落とすことになった。交渉の場に参加したことのある元外交官の一人は、今回の政府最終案を提出した過程をABCで評価するならCだ、と述べた。「本来、結論と期限を定めて行なう交渉は失敗するものだ。自分のカードを全部見せた上で相手に何かしてくれと頼むようでは、なるものもならない。立場を変えて考えれば分かることだ」

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