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徴用工の人生のつづき

崔 善 愛(チェ ソンエ)|2023年4月21日7:00AM

 2年前、友人が亡くなった。劇団「東京芸術座」で長年、制作を担った林邦明さんだ。70歳で「イムパンミョン」と民族名を名乗る決意をしたが、それから数年で逝ってしまった。生前、父親が筑豊の炭鉱で働くも行方不明、たった一人の兄も行方知れず、父親がどのようにして朝鮮から日本に来たのか、何も知らないと語っていた。

フォトジャーナリストの安田菜津紀さんも、他界した父親が在日コリアンだったことを知った。彼女は今もルーツを探し、最近、朝鮮半島の親族にたどりついた。

 在日コリアンの多くは、両親や祖父母がなぜ日本に来たのかを問い続けている。徴用工らの子孫でなくとも、強制連行問題はわたしたちの存在に関わっている。

 1910年~45年、この35年間の日韓「強制併合」によって、約71万人もの「日本人」が朝鮮半島へ移り住んだ。日本では朝鮮人に仕事を「与えた」とよく言うが、「奪ってから与えた」と言うべきだ。

 すべては日本の「侵略」が招いた結果であり、それがなければ徴用工問題もなければ、在日コリアンの歴史も変わったものになっていただろう。

 3月16日、韓国の尹錫悦大統領が来日し、徴用工への賠償を韓国側が肩代わりすることで政治的に「決着」、日韓関係が「正常化」することになったと報じられた。

 これに先立つ3月9日、衆議院安全保障委員会で、三木圭恵議員(維新)がこう発言。「日本の立場として、朝鮮人戦時動員は強制連行、強制労働ではないということもはっきりとお示ししていただきたい」。

 これに対して林芳正外相は、「一概には言えませんが、自らの自由意思による個別渡航のほか、募集、官あっせん及び徴用があったものと考えられます。これらはいずれも強制労働ニ関スル条約上の強制労働には該当しないものと考えておりまして、これらを強制労働と表現することは適切ではない」と答弁した。

 ウクライナへの侵略を「侵略」と、強制連行を「強制連行」と認めないプーチン大統領の姿勢と変わらないではないか。

 日本各地の炭鉱などで働き、若くして亡くなった朝鮮人の遺骨は、各地の寺に「1000体」以上置かれたままだ。日本政府は2005年以降、朝鮮人遺骨の数を寺に申告させているが、その数を把握しながらいまだ何もしていない。

(『週刊金曜日』2023年4月14日号)

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