袴田事件再審 検察は立証方針示さず
粟野仁雄・ジャーナリスト|2023年4月26日7:00AM
拙速な審理は避けるべき
この日、浜松市に残った巖さんは日常生活を支援する「見守り隊」(猪野待子隊長)のメンバーと一緒にドライブを楽しんだという。現在でも拘禁反応の影響が色濃く残る巖さんが今後、再審の法廷に姿を見せる可能性は薄い。小川弁護士は「巖さんは防御ができず訴訟能力がないため、出廷免除を求めている」とし、その可否は三者協議の終盤で決まるという。「袴田巖さんを救援する清水・静岡市民の会」(市民の会)の楳田民夫代表も「死刑判決を下されたような法廷に入れば恐怖感が蘇って精神状態がもっと悪化する可能性がある。出廷はまず無理」と話す。
西嶋団長は「財田川事件、免田事件、松山事件、島田事件でも、検察は再審でなお新証拠を出して有罪立証を求めた。しかし袴田事件は新証拠など出しようもない。(再審決定で)完膚なきまでに叩きのめされた検察が新証拠を出すことも許されない。旧証拠では有罪になどできない」と話した。
裁判所は弁護団に証拠の選別・精査を求めたが「相当な作業量がある」(間光洋弁護士)。小川弁護士は「裁判所が今更そんなことを求めてくるのはおかしい。何らかの抗議をしたい」と話している。
焦点は「捜査側の証拠捏造」が炙り出されるか否か。「市民の会」の山崎俊樹事務局長は「早く無罪判決にしてほしいが、拙速な審理で捏造がうやむやにされるべきではない。吉村検事など存命の人もいる。証人に呼ぶなどして検証はできるはず」と話す。
検察の動きを善意に解釈すればよく検証して冤罪防止のための反省材料にしようとしていると受け取れなくもないが、はたして……。
(『週刊金曜日』2023年4月21日号)