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日常が「邦男」づくし 喪失感上回る存在の大きさ
雨宮 処凛|2023年4月28日7:00AM
このところ、ずーっと鈴木邦男さんの「追悼」ラッシュだ。
3月23日には一水会主催の「お別れの会」に参加。「平服」という案内だったのにかなりの人が喪服姿。が、よくよく見ると、喪服なのはだいたい右翼っぽい人で、服装がラフになればなるほど左翼系。そんな「左右博覧会」的コントラストを拝めるのも鈴木さんらしいと思いつつ、鳩山由紀夫元首相や鈴木宗男議員などのお別れの言葉を聞いたのだった。
4月2日には、東京・如水会館で「鈴木邦男さんを偲び語る会」。『創』の篠田博之編集長が中心となり、私は発起人の1人。当日は篠田さんと司会をつとめたのだが、このタダ働きによって、フリーター時代、鈴木さんに「300円ちょうだい」などと「カツアゲ」していたことはチャラになったはずである。
会場には、金平茂紀さん、森達也さん、松元ヒロさん、辛淑玉さんなどなどおなじみの顔。『週刊SPA!』の連載「夕刻のコペルニクス」時代の担当者からは、連載当時、鈴木さんの周りには、ミニスカ右翼時代の私も含め「何かになろうとしていた」若者たちが集っていたこと、また「何かして獄中に囚われていた人」たちとも分け隔てなく付き合っていたことが語られた。そうしてこの日、みんなの涙を誘ったのは麻原三女である松本麗華さんの言葉。「先生」と呼びかける鈴木さんへの手紙の朗読に、私の涙腺も緩んだのだった。
さて、これでは終わらない。4月8~14日まで東京都内ポレポレ東中野では鈴木さんのドキュメンタリー、『愛国者に気をつけろ!』のアンコール上映とトーク。そうして4月23日には、同南阿佐ヶ谷のトーキングボックスで、ロフトプラスワンの平野悠さんなどと「鈴木邦男追悼の一夜」。また、8月にも、鈴木さんのイベントが決まっている。
こうして鈴木さんのことを原稿に書く機会も多いし、日常が「邦男」づくしだ。
だから私は今のところ、喪失感よりもその存在の大きさを感じている。でも、一連の「祭り」が終わったら本格的に寂しくなるんだろうと今から覚悟してもいる。
それにしても、鈴木さんがあっちにいると思うと、なんだか死ぬのもちょっと楽しみになってくるから不思議だ。こうして人は年をとっていくんだなと、しみじみ思っている。
(『週刊金曜日』2023年4月21日号)
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