「元外国籍」を理由にゴルフクラブ入会拒否
津地裁支部、違法性認めぬ判決
黄澈・ジャーナリスト|2023年4月30日7:00AM
ゴルフクラブが「元外国籍」の出自を理由に入会を拒否することの違法性が争われた訴訟の判決が4月19日、津地裁四日市支部であった。升川智道裁判長(日比野幹裁判長代読)は「違法なものとは認められない」との判断を示し、原告の請求を棄却した。
訴えていたのは、三重県桑名市で会社を経営する40代の男性。韓国にルーツを持つ父母のもと、在日3世として生まれたが、2018年に日本国籍を取得。昨年2月に岐阜県可児市の「愛岐カントリークラブ」に入会を申請したが、「元韓国籍」を理由に拒否された。その後、男性は「法の下の平等を定めた憲法14条の趣旨に反する不法行為だ」と主張し、クラブ側に330万円の損害賠償を求める訴訟を起こしていた。
判決は、クラブが外国籍の会員数に上限を設け、この中に元外国籍も含めることを「理事会の申し合せ」としてきたと事実認定。クラブが男性の入会を拒否したことについては「専ら元外国籍であることが理由だった」と断じた。
一方、判決は、私人である団体は、憲法21条で結社の自由が保障され、新たな構成員の加入を拒否することが違法となるのは、「相手の人権侵害の程度が憲法の規定に照らして社会的に許容し得る限界を超えるような例外的な場合に限られる」との見解を提示。
そのうえで、判決はクラブの会員数は約1500人に及ぶものの、会員による自主的運営が行なわれており、「閉鎖的かつ私的な団体」に該当すると認定。
元外国籍を理由とした入会制限に「合理的な理由があるかには疑念もある」としつつ、「ゴルフは社会生活を営むに当たって必要不可欠なものとはいえない」とし、男性が被る不利益は「社会的に許容し得る限界を超えるものとまでは認められない」と結論付けた。
裁判中、陳述書などを通じて、男性は「在日韓国人としてさまざまな差別を受けてきた。これからも家族と日本で生きていくため、固い決意で国籍を取得したのに、変わらなかった」と心情を吐露。判決後、男性は「自分はいつまで『元外国人』なのか。控訴して別の判断を仰ぎたい」と話した。