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「『ニュース女子』は虚偽」、辛淑玉さんの勝訴確定
本田雅和・編集部|2023年5月13日7:00AM
「ネット時代は一人ひとりが散弾銃を持っている」
提訴後、辛さんは耐えられずに一時ドイツに留学。が、インターネット上の人格攻撃は「世界の果てまでも追いかけてくる」とすぐに思い知らされた。大学にも嫌がらせがきた。身が竦んだ。「死なずにすんだ」のは医師の力を借りられたこともあるが、沖縄やドイツや社会のあちこちで自ら闘いながら「私の震える足を支えてくれる友人たち」がいたからだ。
親や身内も特定されると攻撃される。「シンスゴの代わりは誰もできない」「犬のようにひれ伏して生きるよりは、震えながらでも立って生きたい」と思った。
「かつては右翼団体などが看板を掲げて攻撃してきたが、今は知らない人が私を罵倒する。匿名の大衆が敵になった。ネット時代は一人ひとりが散弾銃を持っている」
「人生をかけて戦争は嫌だと声を上げた人たちを皆で笑って愚弄した」のが「この番組のむごさ」と語る。まさに沖縄差別でありレイシズムだが、これに対する裁判はできなかった。名指しされた辛さんにしか原告資格がないからだ。
「沖縄の平和運動を叩くために朝鮮人である私の出自を利用してデマを流した」。被告らが謝罪すべきは「私だけではなく沖縄の人々だ」とも明言。さらに大きな背景として「女性嫌悪」を指摘する。
「これが姜尚中(東京大学名誉教授)だったら同じことはしないでしょう。叩きやすい、生意気な朝鮮人の女の口を塞ぐことが彼らにとって気持ちのいいことだから」
「日本には差別それ自体を包括的に禁止する法がない」「そこには、明らかに法の不備がある」
辛さんは、DHCとともに番組の司会をした長谷川幸洋・『東京新聞』元論説副主幹も相手取り提訴していた。一、二審とも、長谷川氏への損害賠償請求、謝罪文掲示請求などは「司会をしていただけで企画、(台本などの)編集に関与していない」との長谷川氏側の言い分が受け入れられて退けられた。
これについても辛さんは「抑圧され、差別される側に立つべき者が沖縄の現場すら知らず、裏付けもせず、司会をやり続けた。日本のジャーナリズムの中できっちり問われるべきだ。大きな荷物を私ではなくマスコミが背負った」と批判した。
(『週刊金曜日』2023年5月12日号)