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トルコ国籍クルド人、デニズさん訴訟で国に賠償命令判決 入管の暴力を一部「違法」認定
樫田秀樹・ジャーナリスト|2023年5月16日7:00AM
入管庁(出入国在留管理庁)施設に収容中に職員から受けた暴力をめぐり、トルコ国籍クルド人のデニズさんが起こした国家賠償請求訴訟で、東京地裁(篠田賢治裁判長)は4月20日、被告の国に対し、デニズさんへ22万円の支払いを命じる判決を言い渡した。一部とはいえ原告の勝訴である。
2019年1月18日の深夜、入管庁の東日本入国管理センター(茨城県牛久市)に収容されていたデニズさんが、眠るために向精神薬を求めたところ職員が拒否。さらに大声で薬を求めると、10人以上の職員が「別室で話そう」とデニズさんの居室に押し入り、彼の四肢を固定し身動きの取れない状態にして別室へと運んだ。入国警備官Aの「ワッパ(手錠)かけろ!」の指示のもと、職員たちはデニズさんに後ろ手に手錠をかけてその両腕を持ち上げ、A自身も「ああ、うるさいな。抵抗しないかあ!」と喉の痛点を親指で約20秒間も押し続け、一切の抵抗ができない彼に苦痛を与えた。
被告の国はこれらの行為について「いきすぎであるが、違法ではない」と主張していたが、裁判所は暴行行為の一部を「違法」と認定した。
デニズさんは被告に約1113万円を請求していた。内訳は①収容生活で被ったPTSD(心的外傷後ストレス障害)や精神疾患について20年3月の仮放免以降に費やした治療費(約56万円)、②精神疾患などへの慰謝料(約379万円)、③逸失利益(本来得ていたはずの収入、約383万円)、④暴行の後にトイレの穴しかない保護室と呼ばれる懲罰房に5日間隔離したことへの慰謝料(50万円)などとなっている。
しかし、判決で認められたのは22万円だけだった。裁判所は以下のように判断した。
◆深夜に大声を出したことは他の被収容者の睡眠妨害となるため、連行は合理的である。
◆四肢の固定は本人を負傷させない配慮であり、手錠をしたのは入国警備官らへの危害防止のためであり合理的である。
◆仮放免後に幾度も自殺未遂に追い込まれるほどのPTSDに罹患したことを、本件事案が発症させたとまでは認められない。