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トルコ国籍クルド人、デニズさん訴訟で国に賠償命令判決 入管の暴力を一部「違法」認定
樫田秀樹・ジャーナリスト|2023年5月16日7:00AM
警備官への告訴の意向も
つまり原告の訴えのほとんどは認められなかった。だが裁判所は「制圧」行為自体は違法ではないとしながらも、喉の痛点を押す行為は「警備官がとるべき通常の措置ではない」と判断。しかもデニズさんはすでに後ろ手錠で制圧されているのに、そこに続けざまに苦痛を与えたことが賠償責任にあたると判断した。
ほかにも制圧後の不必要な有形力として「後ろ手錠の両腕を1分以上持ち上げた行為」と「うつぶせでの左肘を左手で1分以上押さえ続けた行為」が違法と認定された。22万円の内訳は慰謝料が20万円、弁護士費用が2万円である。
判決後の集会で、デニズさんは拍手をしながら支援者の前に登場。「私はお金のために裁判をしたのではない。私一人のために裁判をしたのではない。今でも入管では暴力が続いています。入管のしていることは『拷問』。でも、この勝訴で、他に苦しむ仲間も裁判で闘ってほしい」と晴れやかに語った。
その後のデニズさんからの情報によると、国側は控訴を断念したが、デニズさんが控訴した。その理由は「連行」や「制圧」などの有形力を合理的と判断したことや、「暴行と現在の精神疾患との因果関係はない」とした判断に納得がいかなかったからだ。
デニズさんはさらに、勝訴判決を受けたことで、この事件で特にひどい暴行を重ねたA氏に対して刑事告訴をしたいと打ち明けた。隣にいた大橋毅弁護士は「特別公務員暴行陵虐罪で告訴できる。できるだけ早くやりましょう」と前向きに答え、4月26日に水戸地方検察庁に告訴状を発送した。検察が受理すればA氏、そしてA氏に暴力的な制圧方法を教えた教官もその幇助をしたとして裁かれることになる。こちらの闘いにも注目したい。
(『週刊金曜日』2023年5月12日号)