セブンーイレブン時短訴訟 元店主はなぜ二審も敗訴したのか
村上恭介・ジャーナリスト|2023年5月22日7:00AM
時短営業が問題のはずが曲げて「人格裁判」に
松本さん側がこの裁判で争点にしようとしたのは、コンビニ業界で蔓延する24時間営業の是非だった。だが法廷では顧客のクレームの真偽をめぐり、双方が激しく応酬する展開となった。
セブン本部は、内部連絡票を根拠に松本さんへの苦情は開業から約7年間で326件に及ぶと主張したが、この間、改善を強く要求したことは一度もなかった。
ところが19年2月に松本さんが時短営業を始めると、セブン本部は態度を一変させ、「24時間営業に応じないなら、契約の中途解除に誘導する」と申し合わせ、社をあげて松本さんの「異常な顧客対応」の証拠集めに奔走。一審の証人尋問などでは、(1)調査会社を通じて店舗を盗撮する、(2)松本さんのSNSの投稿に問題があっても静観する、(3)地元の警察、大学、近隣者にトラブルの有無を調査し、苦情を集める――などをセブン本部が実行していたことが明らかになった。
一、二審判決は、これらセブン本部側の周到な計画性を不問にしたまま、苦情の大半は事実の裏付けがなく、社内でも自然消滅扱いだったとする松本さん側の主張を認めなかった。
判決後に記者会見した松本さんは「この闘いが24時間営業見直しの契機となり、多くのオーナーから感謝の声が届いた。その成果は喜びたいが、時短営業に逆行する不当判決であり、上告する」と表明した。弁護団長の大川真郎弁護士は「時短営業が原因の裁判なのに、松本さんの人格裁判になった。高裁判決はセブン本部の資料の信憑性を過大評価している点で一審より後退している」と批判した。
(『週刊金曜日』2023年5月19日号)