投票率の低下と民主主義の危機
宇都宮健児|2023年5月26日7:00AM
今回の統一地方選では日本維新の会(大阪維新の会を含む)の躍進が目立った。大阪府知事選、大阪市長選を制し、大阪府議選、大阪市議選でも単独過半数を獲得しただけではなく、奈良県知事選でも与党系候補を破った。統一地方選で当選した維新の首長・議員は599人で、非改選と合わせると774人となり、「地方議員600人以上」という目標を大きく上回った。
しかしながら、深刻なのは統一地方選の低投票率である。統一地方選前半戦の9道府県知事選の平均投票率は46・78%、41道府県議選の平均投票率は41・85%でいずれも過去最低を記録している。統一地方選後半戦でも、市議選、町村長選、町村議選は平均投票率がいずれも過去最低を更新し、市長選と東京の区長選、区議選は前回を上回ったが、引き続き投票率は50%を切る低水準となっている。
また、無投票当選者も多かった。統一地方選前半戦の41道府県議選では、総定数(2260)のうち、無投票当選者が4分の1にあたる565人に上った。366ある1人区では、5割超の190人が無投票で当選し、競争率の低さが際立った。統一地方選後半戦の町村議選では、約3割にあたる1250人が無投票で当選を決めている。大分市長選や、東京・中央区長選などでも無投票当選となっている。
地方自治は民主主義の学校とも言われている。子育て、教育、医療、介護、防災、まちづくりなど、私たちの生活に最も身近な政治が行なわれているところである。その自治体の首長や議員を選ぶ選挙の投票率が年々低下し、半数以上の有権者が投票していない状況は、わが国の民主主義にとって危機的な状況と言える。
救いは今回の統一地方選で、女性の当選者が増えたことである。41道府県議選における女性の当選者数は過去最多の316人となり、294市議選の女性の当選者も1457人で過去最多となった。
東京都では3人の女性区長が誕生し、東京23区の女性区長は、非改選現職と合わせて過去最多の6人になった。武蔵野市議選では女性の当選者が半数に達し、杉並区議選では女性の当選者が男性を上回った。
危機に瀕するわが国の民主主義を救うためには、政治参加を促進する市民運動の強化と学校における主権者教育・民主主義教育の徹底が求められている。
(『週刊金曜日』2023年5月19日号)