連載 ”日の丸ヤミ金”奨学金 第14回
唐突に結審、「指令書」公開訴訟
三宅勝久・ジャーナリスト|2023年5月29日4:47PM
施行令無視の根拠は何か
さて、前回紹介した、日本育英会法施行令を無視した一括請求(支払能力不問で期限の利益喪失ができるとの支援機構の解釈)問題の続きである。
10月25日、寒い曇天の東京地裁立川支部で被告Aさんの弁論準備手続きが行なわれた。日本育英会施行令が定める「支払能力」を無視した繰り上げ一括請求は違法であるとAさんが主張。支援機構は「一括請求の根拠は業務方法書(奨学規程)である。育英会法施行令に必ずしもよる必要はない」と主張。Aさんは、支援機構の「施行令は無視できる」との解釈が正しいことを裏付ける根拠の提出を求める求釈明をした。支援機構側は裁判例を提出する旨回答した。
Aさんの事件を取材しながら奇妙なことに気がついた。施行令を無視できるとの支援機構の法令解釈を裏付ける事実は謎の「判決」のみだ。その判決がどのような理屈により導かれたのか、支援機構が裁判で何を根拠にどんな主張をしたのかはわからない。独自の解釈を裏付ける根拠が不明で「判決」を強調するのはどういうことか。
筆者は翌26日付で、支援機構に対して次の質問をした。
「貴機構は、日本育英会法施行令か日本育英会業務方法書のいずれを適用してもよい(施行令に必ずしも拘束されない)とのご見解をお持ちですが、そうした解釈が正しいことを裏付ける根拠(文献・国会答弁等)は、裁判の判決以外にありますか。ある場合は具体的にお示しください」
回答はすぐに来た。「裁判の判決が、本件に係る根拠と考えております」。支援機構が金科玉条のようにかざす判決とはどんなものなのか。開示が待ち遠しい。
(『週刊金曜日』2022年11月11日号)