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連載 ”日の丸ヤミ金”奨学金 第15回
違法行為の温床、裁判で露見

三宅勝久・ジャーナリスト|2023年5月30日4:59PM

文科省チェック機能せず

 判決理由は支援機構の言い分の丸写しだ。

 すなわち、法的処理の方針を明らかにすると対象になり得る「奨学金ローン」利用者が一時的に身を隠すなどして「支払督促申立」の送達を回避する可能性がある、支援機構の財産上の利益や当事者としての地位を不当に害するおそれがある、その「おそれ」が「漠然としたもの」にとどまるとは認めがたい、だから違法行為是正のためには方針を公にする必要性が高いとはいえない(黒塗りは妥当である)――というものだ。

 中でもひどいのが次の部分である。

「金融庁による監督の対象ではないとしても、関係法令上、被告の違法行為等が認められる場合には、主務大臣である文部科学大臣においてその是正等を命じることができる旨などが規定されているから(通則法35条の3等参照)、この点でも、原告の主張は理由がないといえる」

 通則法とは独立行政法人通則法のことだ。同法35条の3に、独立行政法人の職員が不正や法令違反の行為をしたり業務運営が著しく適正を欠いたりした時には所管庁の大臣が是正や改善措置を命じられる旨を定めている。支援機構の場合、所管庁は文部科学省、大臣は文部科学大臣だ。

 つまり判決は、支援機構の事業に何か問題がある場合も文科大臣が是正・改善命令を出す仕組みがあるから、債権回収の指示文書の情報公開をしなくても問題なし、と言っている。公正な行政運営を実現するという、情報公開制度の目的を軽んじてはばからない。

 では、その文科大臣のチェックとやらは機能しているのか。念のため文科省学生支援課に尋ねた。

――支援機構が「法的処理実施計画」との文書を作成し、そこに債権回収方針を書いたらしいが、この文書を文科省は持っているか?

学生支援課 ありません。

――提出義務はない?

学生支援課 ありません。

 チェックどころか、実態は支援機構にお任せらしい。これは恐ろしい話である。

 札幌地裁の判例(平成29年〈行ウ〉第4号)によれば支援機構の「奨学金ローン」は自治体の補助金交付などと異なり私法上の消費貸借契約だとされる。金を貸すという面だけ見れば貸金業者や銀行と同じだ。だが貸金業者には貸金業法、銀行には銀行法があり、さらには金融庁のガイドラインなどで業務が厳しく監督されるのに対し、支援機構にはそれがなきに等しい。情報公開すらままならないなら、問題ある貸付や取り立てが野放し状態になるのは必然だろう。まさに「日の丸ヤミ金」だ。

 筆者は控訴して引き続き黒塗り部分の開示を求めていく考えだ。読者各位の応援をお願いしたい。

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