ミャンマー取材で殺害された長井健司さんのカメラ16年ぶり返還 そこに映っていたものは
明石昇二郎・ルポライター|2023年5月31日7:00AM
会見でテレ朝記者が反発
山路代表は会場からの質問に答える形で、4月26日にバンコクで開かれた「カメラ返還」に関する記者会見に参加しようとした日本のさる報道機関が会見から締め出され、日本の報道機関ではテレビ朝日が〝独占取材〟した格好になっていたことに疑問を呈した。
すると、これを聞いたテレビ朝日の記者が「テレビ朝日が(他社を)会見から締め出したという根拠があるのか」と猛然と反発したのである。その記者は、長井さんの遺族に同行していた番組スタッフだった。
バンコクでの「会見締め出し」の真相は、この日の東京での会見だけでは明らかにならなかったものの、この日の会見を通じて浮かび上がってきたのは次の事実だった。
①第一報の「報道ステーション」で紹介された映像の著作権はAPF通信社にあるが、映像のクレジットは同社に未確認のまま、単に「撮影・長井健司さん」とされていた。
②長井さんはAPF通信社としての取材でヤンゴンを訪れていたが、同番組はその事実には一切触れず、なぜか「フリージャーナリストの長井健司さん」として紹介していた。
そのうえで山路代表は、同番組の報じ方は「BPO(放送倫理・番組向上機構)案件」であると、会見で指摘していた。
番組作りの〝イロハ〟を無視したと指摘された形だが、この二つの点について筆者がテレビ朝日広報部にコメントを求めたところ、「制作の過程については従来、お答えしていません」との回答があった。
放送局の〝勇み足〟で振り回され、心を痛めるのは、誰より長井さんの遺族である。テレビ朝日のいち早い善処と、遺族に対する配慮が求められる。
(『週刊金曜日』2023年5月26日号)