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連載 ”日の丸ヤミ金”奨学金 第16回
「トンデモ判決」の内幕とは?

三宅勝久・ジャーナリスト|2023年5月31日5:11PM

「冨田判決」情報公開請求

「支払能力」を調べずに一括請求したのは施行令違反で無効だと判断した函館地裁判決。

 それにしても札幌高裁「冨田判決」は大問題だと言わざるを得ない。詳しく調べるため裁判記録を閲覧したかったが、事件番号や判決日が黒塗りにされており、特定できない。やむなく筆者は昨年11月11日、支援機構に対して次の内容で情報公開請求を行なった。

「札幌高裁判決および最高裁決定の事件にかかる一審判決文、控訴理由書、支援機構の準備書面、書証、尋問調書」

 1カ月後、決定通知が届いた。一審判決が部分開示で出てきた。函館地裁の事件だ。事件番号や判決日、個人名が「個人情報」を理由に不開示にされている。判決文以外の書面はすべて不開示だ。理由は「個人情報」、そして〈争訟に直接関係する文書であるため、公にした場合、争訟に係る事務に関し、独立行政法人等の当事者としての地位を不当に害する恐れがあるため〉だと説明されている。

 函館地裁の判決文を読んでみると、完全ではないものの、事件の内容が具体的に見えてきた。

 支援機構に訴えられたのは連帯保証人の男性だ。2017年2月に合計約200万円(元本約157万円)の一括弁済を求められ、その後、支払督促申し立て、取り立て訴訟へと移行している。この元本約157万円のうち28万円が、返還期限未到来分を繰り上げて一括請求したものだった。

 裁判で男性側は、この一括請求は日本育英会法施行令6条3項に違反しており無効だとの反論を行なう。つまり、本来であれば連帯保証人より先に主債務者(奨学金ローンの利用者である女性Bさん)に対して一括請求をしなければならないが、支援機構はそれをしていない。仮にしようとしても、Bさんは施行令が定める「支払能力」を有していないから一括請求できない、という主張だ。

 一方の支援機構は、こんな理屈を述べている。

①日本育英会法施行令6条3項の対象者(学資金の貸与を受けた者)には主債務者(奨学金ローンの利用者)のほか連帯保証人も含まれる。

②支援機構は主債務者の経済状況を調査する権限を有していないから、「支払能力がある」とは、一括請求当時、支払能力の有無が原告に明らかでない場合を含む。

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