日テレの超高層ビル計画 住民の賛否割れて行方は混沌
竪場勝司・ライター|2023年6月5日7:00AM
学識経験者からも異議が
3月30日に開かれた千代田区都市計画審議会では、100人以上の傍聴人が見守る中、2時間以上にわたって審議が行なわれたが、予定されていた計画案の採決は見送られ、今後も審議が継続することになった。
審議会では学識経験者の委員から、今回の計画案(高さ90メートルの超高層ビル)は、地区計画で定めた地区計画の目標「建築物の高さの最高限度、用途や形態・意匠を制限することで、中層・中高層の落ち着いた街並みと良好な住環境の維持・保全を図る」と整合性が取れていない、との指摘があった。
計画案をめぐりさまざまな指摘があって、この日に採決をするかどうかを問うことになり、学識経験者を中心に「採決するべきではない」の意見が多数を占めた。次回の都市計画審議会は7月に予定されている。
「番町の町並みを守る会」では、共同代表の大橋智子さん(68歳)を中心に高さ制限を60メートルのままとした代案を作成・提案している。同じ共同代表の中原秀人さん(72歳)は「90メートルのオフィスビルができれば、守る会の試算では7000人、日テレ案でも4000人の就業人口が増える。必ず交通量が増え、番町地区の交通インフラがあふれてしまう。車が少ない静かな住環境を維持したい」と反対する理由を説明する。
日テレの藤井潤・不動産事業部長は「地域コミュニティの活性化のお手伝いをしたいとの思いで、10年かけて地域の方々と協議を重ねてきた。住民の方の要望に応え、広場を作り、施設のバリアフリー化、歩道の確保などを盛り込んだプランを作った。地域貢献の要素を実現し、バランスのとれた再開発をするためには90メートル程度の高さはどうしても必要になる。さらに住民の方の理解に努めていきたい」と話している。
(『週刊金曜日』2023年6月2日号)