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民団徳島県地方本部事件、脅迫状の男に有罪判決 刑事裁判で初の「差別」明記

石橋学・『神奈川新聞』記者|2023年6月10日7:00AM

判決への思いを語る姜盛文団長(右)と李根茁民団中央本部人権擁護委員長。5月31日、徳島市内で。(撮影/石橋学)

 民族的マイノリティが被害者となった刑事裁判の判決で「差別」の2文字が初めて記された。差別を差別として裁くことに及び腰な司法を前進させる判決となった。

 在日本大韓民国民団(民団)徳島県地方本部への脅迫罪に問われたヘイト団体「日本第一党」元党員、岩佐法晃被告人(40歳)に対し、徳島地裁は5月31日、懲役10カ月、保護観察付きの執行猶予4年の判決を言い渡した。

 被告人は2022年9月、「反日政策ヲ続ケル様デアレバ、次ハ実弾ニ寄ル消化ニヨッテ浄化スル」などと書いた封書を投函した。細包寛敏裁判官は、被告人が嫌悪感を増大させ、在日コリアンに恐怖を与えようとしたと指摘。「脅迫文言には韓国人に対する差別意識を強くうかがわせる言葉が使われている」と悪質性に言及し、「韓国人、民団に対する偏見にまみれ、恐怖を与えて排除しようとするきわめて独善的で身勝手なもので、到底許されない」と指弾した。

 ヘイトクライム裁判では動機が「悪感情」という個人の問題に押し込められがちだが、今回は「差別」「偏見」という社会的背景を持つ犯罪として目が向けられた。「出自や所属のみによって標的にされたことを理解させ、強い恐れと不安を与えている」とも述べ、属性で一括りにして攻撃するメッセージ犯罪の本質も捉えている。「偏見や嫌悪感に基づく」との表現でヘイトクライムを実質的に認定した22年8月の京都ウトロ放火事件判決からさらに進んだ内容となった。

 執行猶予は相場より1年長い4年で、保護観察もついた。同地方本部の姜盛文団長は「言いたいことを言ってくれた。社会的メッセージとして予防につながれば」と安堵した。もっとも「ヘイトクライム」と断じた論告を含め「理解ある判決」が続く保証はない。欧米のようなガイドラインづくりや捜査・司法機関への研修、包括的な差別禁止法の制定が急務だ。

(『週刊金曜日』2023年6月9日号)

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