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トランスジェンダー当事者の弁護士に殺害予告15件
石橋学・『神奈川新聞』記者|2023年6月17日7:00AM
倒錯した議論への危機感
「こうしたヘイト的な脅迫はいずれ来るだろうと考えていた」と仲岡弁護士は言う。前記法案が成立すると性犯罪目的の男性が女湯や女子トイレに入れるようになるというデマが流され、「ヘイトクライムは攻撃対象にしていいのだという社会の雰囲気が醸成されて起きる。あいつらは怖い、危険だ、女性の権利が害されるといった不公平感、危機感をあおるヘイト言説はあっという間に浸透する」。
会見に同席した同僚の上林恵理子弁護士もトランスジェンダーの人権を守ることが女性の権利と対立するかのように捉える倒錯した政治家らの言動や報道に危機感を深める。
「その構図がそもそも誤り。間違った認識の下に高尚な議論がなされ、間違った認識が一般社会に広がる。結果、犯罪予備者は攻撃していいという社会が作られる」。法案をめぐっては、自民党内で「分断をかえってあおる」といった空論がまかり通り、「女性の権利侵害への対応」をうたって日本維新の会と国民民主党が対案を提出する有り様。
「選良」による「議論」の体で差別と排除がより強く煽動される現状に「法案が通れば女湯や女子トイレに男性が入ってくるという恐怖や不安はあおられたものだ」と強調する。
トランスヘイトは2018年にお茶の水女子大学がトランス学生を受け入れたのがきっかけとなった。ヘイトスピーチの問題に取り組む神原元弁護士は「在日コリアンへのヘイトに比べエスカレートのスピードが速い」と警鐘を鳴らす。
在日コリアンへのヘイトクライムは放火という多くの命を奪いかねない重大犯罪が続発する。外国ルーツへの差別的言動はヘイトスピーチ解消法が制定され、川崎市では罰則条例までできた。相模原市では性的マイノリティに対するヘイトも罰則対象に含む条例作りが有識者から提案されている。
神原弁護士は「ヘイトスピーチはマイノリティの命に関わる。LGBTの差別をあおる言動も規制が不可欠だ」と話している。
(『週刊金曜日』2023年6月16日号)