「組織は加害者の味方をした」 空自の女性自衛官がセクハラ被害で国賠訴訟
竪場勝司・ライター|2023年6月18日7:00AM
航空自衛隊の現役自衛官の女性が、自衛隊内のさまざまな相談窓口を利用して同僚からのセクシュアルハラスメント被害を再三にわたって訴えたのに、隊内で十分な対応が取られなかったとして、国に計約1169万円の損害賠償を求めた訴訟の第1回口頭弁論が6月8日、東京地裁で開かれた。
被告の国側は答弁書を提出して争う姿勢を見せ、請求棄却を求めた。一方、原告の女性自衛官は法廷で意見陳述を行ない、セクハラ被害と職場の実態を訴えた。
原告側によると、女性自衛官は那覇基地に着任した2010年9月以降、同僚のベテラン男性隊員から容姿や身体的特徴への揶揄、交際相手との性行為などに関する卑猥な発言を繰り返し受けるようになった。女性自衛官は夜眠ろうとしてもセクハラの光景が脳裏に浮かび、不眠に苦しむようになったという。13年に上司らにセクハラ被害を訴えたが、配属を変更するなどの対応は取られなかった。
女性自衛官は16年1月、ベテラン隊員個人を相手取り、損害賠償を求める訴訟を那覇地裁に起こした。17年5月に出された同地裁判決は「国家賠償法上、公務員個人の責任を問うことはできない」として女性の請求を退けたが、ベテラン隊員の発言については「原告の尻や胸等の身体的部位に関する発言や、性行為に関する発言等は、職場における発言内容として不適切であって、社会的に相当な程度を超えて原告の人格権を侵害する違法なセクハラ発言に当たると判断される可能性は、十分にある」と認定した。
原告側は、女性自衛官がこれまで所属する班のセクハラ相談員や那覇基地の渉外室、航空自衛隊の公益通報窓口など、さまざまな相談窓口(訴状によると合計で11カ所)にセクハラ被害を申告し、ベテラン隊員の処分などを求めてきたのにほとんど対応がなされず、むしろ自衛隊側が隊員15人による「ハラスメントは見聞きしていない」とする陳述書を提出するなど、セクハラの隠蔽を図ったと主張。女性自衛官を「厄介者」扱いする雰囲気が隊内に醸成され、女性自衛官は二次被害に苦しむことになっていると指摘。「空自側は被害を防ぐための配慮義務などを怠った」としている。
那覇地裁での訴訟で女性自衛官は、関係者に提供された隊員の供述調書などの調査資料を入手して証拠として提出。これが規律違反にあたるとして22年7月に訓戒処分を受けた。今回の国賠訴訟では、この訓戒処分が不利益な取り扱いにあたるとも主張している。