大阪唯一の地方紙『大阪日日新聞』
一世紀の歴史、力尽きて終焉
相澤冬樹・ジャーナリスト|2023年6月25日7:00AM
スクープでも部数増えず
しかし、その考えは甘かった。購読者はさして増えなかった。会社はこの記事を同年の日本新聞協会賞の候補としてエントリーしなかった。機会を生かして部数を伸ばそうという意識が欠けていたように思う。紙媒体全体がじり貧状態にあることも要因の一つだ。
だがそれだけではないだろう。筆者はよく講演などで「応援してますよ」と励ましていただくのだが、中にはこう話す方がいる。
「図書館で記事を(あるいは著書を)読んで応援していますから」
これは応援だろうか? 記事を載せた新聞や雑誌を、お金を出して買っていただかないと、新聞社や出版社の経営は成り立たない。ネットで読める無料記事のほとんども出所は新聞や雑誌、テレビであり、誰かが取材執筆の経費を出さないと維持できない。読者が買うことで媒体は維持され、ひいては言論が守られる。応援するならぜひ購読していただきたい。節約しないと暮らしが成り立たない方も、できればいい記事を載せる媒体にもお金を向けていただきたいと願う。
苦しい時期にお世話になった『大阪日日新聞』の休刊に、昔のドラマの名台詞を思い出す。この主人公の名も「相沢」だった。
「同情するなら金をくれ」
(『週刊金曜日』2023年6月23日号)