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78年前に起きた花岡事件 強制労働の犠牲者の慰霊と追悼を大館市が主催

室田元美・ルポライター|2023年7月10日7:00AM

慰霊碑に向かって式辞を読み上げる福原淳嗣大館市長。約170人が参列した。(撮影/室田元美)

 秋田県の旧花岡町(現在の大館市)で起きた花岡事件から今年で78年になる。6月30日、降りしきる雨の中、十瀬野公園墓地にある慰霊碑(中國殉難烈士慰霊之碑)を前に大館市主催の中国人殉難者慰霊式が行なわれた。

 中国から強制連行され、鹿島組(現在の鹿島建設)花岡出張所で働かされた人々は過酷な労働、飢え、拷問などに苦しめられた。命と尊厳を極限まで脅かされ、耐えきれずに1945年6月30日夜、耿諄大隊長のもと一斉蜂起。しかし警察官や憲兵隊、民間人らに捕えられ、花岡鉱山の娯楽施設であった「共楽館」前の広場で三日三晩、飲食物を与えられず炎天下にさらされた。建物の中でも激しい拷問が行なわれた。この事件も含めて、鹿島組での中国人死者は419人。連行された986人のうち、死者は実に4割以上にのぼる。

 4年ぶりに中国から3人の遺族と支援者らを招いて行なわれた慰霊式では福原淳嗣・大館市長が「どのような状況下であっても、人の自由や尊厳を奪い、傷つけるという心なき行為は決して許されることではありません」と断言。世界の恒久平和のために努力を重ねていくこと、事件を決して風化させず、後世に語り継いでいくことが大館市民の重要な使命だとあいさつした。遺族代表の張恩竜さんは「中国と日本の友好、恒久平和のために努力したい」と述べた。

 式の最後は、李政美さんの鎮魂歌に包まれて全員が慰霊碑に献花。慰霊碑の裏面には鹿島関係の死者419人とあわせて同和鉱業関係の死者10人、計429人の氏名が刻まれている。遺骨を受け取っていない遺族にとっては、この地で最期を迎えた事実を突きつけられる瞬間なのだろうか、大切な人の名を指でなぞって涙する。

 花岡事件を記憶する人々が年々少なくなる中で、9歳の時に目撃した僧侶の蔦谷達元さん(87歳)に当時の様子をうかがった。

「あの頃、みんな中国人を『シナ人』と呼んで、差別というより、はたして人として扱っていたかどうか。一斉蜂起を翌日知り、学校から帰って共楽館前に駆けつけると、中国人が次々トラックから降ろされるところでした。住民は広場に入れず道にひしめいて見ていましたが、(中国人を)『叩いてやる!』と息巻く人も。たくさんの中国人が、地べたに座らされ、数人は縄で足か腰を数珠つなぎにされて歩かされていたのを覚えています。私は、ああ捕まったんだなと見ていましたが、父(当時の信正寺・蔦谷達道住職)からは『人がいじめられているのを見て何が面白いんだ!』と叱られました」

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