「差別されない権利」認める 「全国部落調査」裁判、東京高裁も地名一覧公表差し止め
平野次郎・フリーライター|2023年7月16日7:00AM
裁判を当てにしていないが上告する
そのうえで高裁判決は、被差別部落出身であることを推測させる情報を公表されることは〈これに対する不安感を抱き、ときにそのおそれに怯えるなどして日常生活を送ることを余儀なくされ〉とし、差別を受けることなく生活する人格的な利益を侵害されると断定。「法的救済を求めることができる範囲」として、一審判決が地名一覧に掲載の41都府県に原告本人の住所か本籍がある人に限っていたのを、本人や親族の住所か本籍が現在あるか過去にあった人にも拡大した結果、差し止めの範囲は一審より6県増えて31都府県に。残る10県は原告がいないなどとして差し止めを認めなかった。
判決後に原告側の報告集会が開かれた。弁護団の指宿昭一弁護士は「判決が部落差別の認定事実について突っ込んだ記述を追加し、差別されない権利を人格権として認めたことは大きな前進だ。陳述書などで部落差別の現実を訴え、差別は絶対に許されないとの思いを伝えたことで、裁判官が勇気をもって書いた判決だ」と評価。
部落解放同盟の西島藤彦中央執行委員長は「差別を禁止する法律がない以上、法律に代わる唯一の手立てが判例だ。差別されない権利を認めた今回の判決を最大限に活用し、差別禁止法をつくりあげていきたい」と決意を表明した。
一方、示現舎の宮部龍彦代表は筆者の取材に「全国部落調査を公表すると結婚差別によって不利益を受ける者がいるということを公的に認定した恐ろしい判決だ。結婚差別があるというのは歴史的にも間違っている。裁判を当てにしていないが上告する」と答えた。
(『週刊金曜日』2023年7月14日号)