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北九州市立若松図書館で貸出数の“水増し”が発覚 その動機は?
長岡義幸・フリーランス記者|2023年7月17日7:00AM
指定管理だとそういう成績を求められるから過剰に
他方、図書館の自由やプライバシー保護のため、利用者名と図書名のデータは返却時に原則消去されるはず。個人とひも付いて貸出数がわかるのは不自然だ。なぜ不正な貸出が2万冊余とわかったのか市教委に尋ねても「具体的には話していない」と要領を得ない。池上氏に聞いたところ「水増しは毎日300件ほど。正直な数字だが、グレーなところもあったのでその数字も加えた」とする。池上氏や職員が実際に読んでいた本も含まれた概算らしい。データを残していたわけではないようだ。
全国の図書館事情に詳しい図書館長経験者は、貸出数の水増しは珍しくないと語る。近年では、山口県下関市立図書館の指定管理者の職員らが大量に貸出手続きを行ない、そのまま返却ポストに戻していた出来事があるという。当時の市長が問題視して図書館運営を市の直営に戻したそうだ。
「水増しは認められないが、日本施設協会がここまで追い詰められていたのかと思うと、かわいそうな面もある。北九州市では、直営時代もそんなに貸出数が多くなく、指定管理になっても図書館費はあまり変わらなかったようだ。似たような自治体はどこにでもあり、各地の指定管理者から『やってる方がむなしくなる』という声も聞く」と館長経験者は話す。
NPO法人「げんきな図書館」の副理事長として東京都内の中野区や渋谷区の図書館業務を請け負ったことのあるポット出版社長の沢辺均氏は「建前ばかりが先行しているが、いま図書館のパフォーマンスを測る指標は来館者数と貸出数ぐらいしかない。だから(数字には)重みがある。指定管理だとそういう成績を求められるから過剰になってしまうってことなんだと思う」と背景を語った。
指定管理者のみが責を負う単純な構図の出来事ではないようだ。
(『週刊金曜日』2023年7月14日号)