袴田事件再審、検察側が有罪立証する方針発表
粟野仁雄・ジャーナリスト|2023年7月21日2:28PM
再審が決定している袴田事件について静岡地検は7月10日、再審公判で有罪立証する方針を丸山秀和検事名で静岡地裁に伝え、発表した。弁護側は早期の無罪判決を求めているが、再審公判で改めて有罪、無罪が争われることになり、審理の長期化は避けられなくなった。死刑囚の再審は過去、免田事件、財田川事件など4件あり、いずれも無罪判決となっている。
同日、静岡市内で記者会見した袴田巖さん(87歳)の姉・ひで子さん(90歳)は「検察はとんでもないことをするだろうと思っていた。これはしょうがない。検察の都合ですから。裁判で最終的に勝っていくしかない。頑張ります」と気丈に述べた。弁護団の小川秀世事務局長は「ただの再審請求審の蒸し返しにすぎない。巖さんはもう87歳。ようやくここまでたどりついたのに、検察は人の人生を何だと思っているのか」と怒った。
検察側は犯行着衣とした「5点の衣類」(事件発生から1年2カ月後に味噌タンク内より発見)について専門家の意見を聞くなど、有罪立証に向けた追加捜査を実施してきたとしたが、笹森学弁護士は「7人も集まって鑑定するなど前代未聞。まるで署名活動ですよ。1人でちゃんとした鑑定ができないからでしょう」と皮肉った。
40年以上前から袴田事件に関わってきた田中薫弁護士は「5点の衣類がいつ(味噌タンクに)入れられたのかもはっきりしていない。最初(警察は)犯行着衣はパジャマとし、新聞も血染めのパジャマと書きたてた。それが1年2カ月経ってみたら麻袋に入った5点の衣類だったなんて、そんなことがあるのでしょうか」と訴えた。
筆者の「3月に特別抗告断念を決めた甲斐行夫検事総長の判断か」との問いに笹森弁護士は「東京高検のイケイケ派の決めたことで、甲斐さんは苦虫を嚙み潰しているのでは」と推測。間光洋弁護士は「検察がいつも誰の判断かを示さないのは無責任で卑怯」と話した。