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岸田政権、財源問題を先送りした「骨太方針」
宇都宮健児・弁護士。元日本弁護士連合会会長。|2023年8月3日4:16PM
政府は6月16日、経済財政運営の指針いわゆる「骨太方針」と成長戦略「新しい資本主義のグランドデザイン及び実行計画2023改訂版」を閣議決定した。
政府は防衛政策に関しては、2023年度から5年間で防衛費に総額約43兆円をつぎ込んで防衛費の「倍増」を図る計画であり、先の通常国会では防衛財源を確保するために「防衛力強化資金」を創設する「防衛財源確保法」を成立させている。
また、財源の一部を法人税、所得税、たばこ税の増税で賄う方針を決めているが、増税時期はこれまで「2024年以降の適切な時期」としていたが、骨太方針では「2025年以降のしかるべき時期とすることも可能となるよう、柔軟に判断する」として、増税の先送りを示唆している。近いうちにあると予想されている衆議院選挙をにらんだ対応と思われる。
岸田政権が重視する少子化対策では児童手当の拡充など3年間の集中的な取り組みに3兆円台半ばの追加予算を投じることになっており、財源としては社会保障費の歳出改革や社会保険料の上乗せを検討するとしていた。しかしながら、骨太方針では具体的な財源論議は先送りしている。
成長戦略として盛り込んだ「新しい資本主義の実行計画」では、学び直しによる労働者の能力向上や成長分野への労働者の移動を支援する労働市場改革を掲げているが、岸田文雄首相が首相就任時に示した分配強化や貧困・格差の是正は大きく後退してしまっている。防衛政策や少子化対策の財源をあいまいにして先送りする骨太方針は、無責任と言わねばならない。
また、防衛政策に関しては、敵基地攻撃能力(反撃能力)の保有を含む防衛予算倍増政策は、憲法9条に基づく専守防衛政策と矛盾する憲法違反の防衛政策であり、厳しく批判されねばならない。
さらに、少子化対策についても、岸田政権は当初「異次元の少子化対策」と言っていたが、発表された少子化対策の内容はとても「異次元」と言えるものではなく、きわめて貧弱な内容である。
「異次元」というからには、せめて、全国の小中学校の学校給食の完全無償化、大学の授業料の無償化、返済中の奨学金の半額返済免除、最低賃金の全国一律時給1500円への引き上げ、非正規労働者の正規化の促進ぐらいは打ち出すべきである。
(『週刊金曜日』2023年7月28日号)