「日の丸・君が代」強制許すな
教育関係者ら「新たな戦前」への危機感語る
竪場勝司・ライター|2023年8月9日7:49PM
「教育DX」推進の裏側で
コロナ禍で全国一斉休校の状況があったことで「民間の力を活用すれば子どもたちの学びを止めずに学習できる」と、経産省は企業のノウハウを学校教育に導入する社会実験を展開。一方、文科省は一斉休校で学校の役割が再認識された面もあり「デジタル化は進めるが、伝統的学校のかたちである日本型学校教育は守る」との方針を打ち出した。教育DXに関する急進派の経産省と漸進派の文科省を調整する形で、内閣府の総合科学技術・イノベーション会議にワーキングチームが設けられ、最新の教育政策案が22年に出されたが、内容はかなり経産省寄りのものなっている。
児美川教授は「どんな学校と教育を、子ども・保護者・市民と創っていくのか。『共同での豊かな学び』などの対抗軸を打ち出していかないと大変なことになる」と警鐘を鳴らした。
各地からの闘いの報告では、東京・大阪・千葉など「君が代」不起立で処分を受けて裁判闘争をしている原告などが次々に登壇。現状の説明や問題提起を行なった。
16年3月の卒業式での戒告処分の取り消しを求めて裁判を行なっている東京の女性は、この処分を理由に22年3月に再任用を打ち切られた。「教員の仕事に生きがいを感じていたので、定年後も5年間は再任用として、その後は非常勤教員として体力が続く限り働こうと思っていた」と説明。
19年1月の朝に再任用の採用が決まったことを校長から告げられ、その日の午後に事前告知を受けた。内容は、年金支給開始年齢までは採用するが、その後は16年に処分されているため、任期を更新しないし、非常勤教諭にも採用しない、というものだった。女性は「処分を受けて十分不利益を被っているのに、定年後の職まで奪われるのはあまりに理不尽だ」と訴えた。
また、22年11月に公表された国連自由権規約委員会の勧告で「君が代」不起立で教員が停職6カ月の処分を受けたことに懸念が表明されたことの報告があった。
集会後、参加者たちは日比谷公園から銀座周辺を通る約1・5キロのコースをデモ行進。「『日の丸・君が代』の強制反対!」などのシュプレヒコールを繰り返した。
(『週刊金曜日』2023年8月4日・11日合併号)