東電株主代表訴訟の控訴審開かれる 一審は旧経営陣に13兆円の賠償判決
小石勝朗・ジャーナリスト|2023年8月9日8:28PM
株主側「経営責任は明白」
もう一つの争点は、何らかの対策を取っていれば事故を防げたか(結果回避可能性)。一審判決は原発の主要な建屋や重要機器室に津波が浸水しないようにする「水密化」をしていれば「重大事態に至ることを避けられた可能性は十分にあった」と認定。計画・設計から工事完了まで2年程度で可能だった、と判断した。
この点についても旧経営陣側は「一審判決は(事故の)後から考えてできそうなことに因果関係を認めた」と批判。「対策をしても事故は防げなかった」「2年で工事(完了)は不可能」と主張した。
一方、株主側は原発事故被害の甚大さを詳細に説明。そのうえで、旧経営陣は「長期間、対策を先送りして放置しており、責任があることは明確だ」とアピールした。
原発事故で福島県から石川県への避難を余儀なくされた原告の浅田正文さん(82歳)も意見陳述し、「原子力事業者には過酷事故を万が一にも防止すべき社会的・公益的義務がある」とした一審判決を引いて「損害をしっかり償うことを命じて下さい」と訴えた。
口頭弁論終了後に記者会見した株主側弁護団の海渡雄一弁護士は「高裁は充実した審理をしようとしている」と感触を披露。一審で実現した裁判官の原発視察を、高裁にも申し立てる方針を明かした。次回は11月1日で、双方が1時間半ずつプレゼンをする。
河合弘之・弁護団長は「(勝訴判決を)死守すべき重要な闘い」と決意を語り、「法人ではなく個人に賠償させることで(電力会社の経営陣に)『原発は怖いからやめよう』と思わせ、日本中の原発を止めることにつながる」と株主代表訴訟の意義を力説した。
(『週刊金曜日』2023年8月4日・11日合併号)