2023年上半期放送の自衛隊登場バラエティ番組、突出して日テレが多いのはなぜ?
早川タダノリ・編集者|2023年8月14日1:53PM
ここ数年、民放地上波のバラエティ番組に陸海空の自衛隊が登場する回数が増えていないか? ということで、各局から提供される番組表データに「自衛隊」ワードが入っているものをすべて録画してカウントしてみた。
「自衛隊小銃乱射事件」「自衛官闇バイトで強盗」などのニュースを除外し、「元自衛隊芸人」やす子が出演しているだけのものも割愛。今年上半期(週単位で区切ったので7月1日〈土〉放映分を含む)に放送されたもののうち、エンターテインメント系要素が強い番組をピックアップしたのが画像の一覧表だ。
この13本のうち日本テレビ系が8本と圧倒的でフジテレビ系の4本が続く。内容的には、自衛隊の装備・訓練リポート、自衛隊メシなどグルメ系、タレント体験入隊ドキュメントなどに大別できる。
日本テレビ系番組の中でも、毎週金曜日19時56分から放送の「沸騰ワード10」は突出して多い。この番組で「自衛隊に取り憑かれた芸人」の称号を与えられたのがカズレーザーで、彼自身が自衛隊や銃器・兵器に詳しいため、リアクションがなかなかにマニアックだ。
防衛大臣から感謝状
2021年には同番組内で、岸信夫防衛大臣(当時)からカズレーザーへ「防衛省・自衛隊の活動への国民の皆様の理解促進に大きく貢献していただきました。大変ありがたく思います」と感謝状を手交(岸信夫ブログ21年5月8日)。自衛隊のエンタメ的広報への貢献大と認定されたわけだ。
5月26日放映回では、沖縄・石垣島に3月に開設されたばかりの陸上自衛隊石垣駐屯地を他メディアに先駆けてリポートしている。VTRに登場する駐屯地の広報担当が「カズさんの自衛隊愛が強いので真っ先に見ていただきたいと思いました」と言えば、駐屯地司令(一佐)も「自衛隊に対する情熱と愛情に本当に感銘を受けております」と、その宣伝効果にたいへんな期待を寄せている模様。最新の20式5・56mm小銃やスナイパー訓練、さらには地対艦ミサイル(SSM)射撃準備訓練の一端も公開し、カズレーザーは大興奮であった。
言うまでもなく石垣駐屯地は、地元の反対の声をおしきってかなり無理やりな経緯で設置された。ミサイル配備について不安の声も根強い。こうした背景をいっさい無視して「もしもの時の訓練を常にしていただいている、ありがとうございます」と感謝でまとめて見せる。装備を見せることもまた「抑止力」になるとは番組内での陸自隊員のセリフだ。そうした機能を期待された、かなりモロなプロパガンダ動画だと言えよう。
昨年12月に策定された「国家安全保障戦略」には、「自衛官、海上保安官、警察官など我が国の平和と安全のために危険を顧みず職務に従事する者の活動が社会で適切に評価されるような取組を一層進める」と書き込まれた。自衛隊を要素にしたバラエティ番組は、さらにウオッチを続けていく必要があるだろう。
(『週刊金曜日』2023年8月4日・11日合併号)