「原爆の日」前日、広島で各党議員が核廃絶に向け討論
「核禁条約に背を向けるな」
竪場勝司・ライター|2023年8月18日1:28PM
「核兵器廃絶へ 日本はいま何をすべきか」をテーマにした国会議員討論会が8月5日、広島市内で開かれた。11月にニューヨークで開催される核兵器禁止条約第2回締約国会議への日本の対応が議論の焦点となり、公明党を含めたほとんどの政党の出席議員から「日本政府はオブザーバー参加すべきだ」との意見が出された。
主催したのは日本原水爆被害者団体協議会(日本被団協)、核兵器廃絶国際キャンペーン(ICAN)、ピースボートなどでつくる「核兵器廃絶日本NGO連絡会」。連絡会では各政党の国会議員を招いて核廃絶の問題を議論する討論会を2018年から重ねており、20年以降は8月5日に広島で開催する形が定着している。
核兵器禁止条約は21年に発効したが、日本政府は「核保有国が参加していない」などの理由を挙げて条約への参加に否定的で、22年6月の第1回締約国会議へのオブザーバー参加も見送っている。
討論会では、まず中満泉・国連事務次長が「核をめぐる状況が急速に変化してきている。安全保障戦略において各国が核兵器の役割を減少させるために努力を重ねてきたが、それが反転してしまい、核兵器の持つ役割が大きくなりつつある」と指摘。さらに「核兵器の使用の威嚇がなされるような状況がロシアのウクライナ侵攻後に生まれている。核兵器の使用・拡散を防ぐ努力が大きく揺らぎ始め、特に核保有国間の緊張が非常に高まっている。ウクライナ侵攻により核兵器を持つことが究極の安全保障の手段ではないかとの誤った言説が広まりつつある」と述べ、国際情勢の変化に国連として大きな懸念を表明した。
続いて自民・公明・立憲・維新・共産・国民・れいわ・社民の各政党の出席議員が、討論会のテーマに対する各党の基本姿勢について説明した。公明党の山口那津男代表は「核不使用の法的規範性を高めるためにも、世界92カ国が署名し、68カ国が批准する核兵器禁止条約の議論に、日本としても背を向けるべきではない。第2回締約国会議にオブザーバー参加し、核兵器国と非核兵器国との間の橋渡しの役割を追求すべきだ」と発言。立憲民主党の長妻昭衆議院議員をはじめ、出席した野党6党の議員全員が、第2回締約国会議に「日本政府は必ずオブザーバー参加すべきだ」と強く訴えた。
自民「重く受け止めたい」
オブザーバー参加について各党から問われる形になった自民党の寺田稔衆議院議員は「核兵器禁止条約は非常に重要な条約。核保有国と非核保有国が対立の構図にならないようNPT(核兵器不拡散条約)の議論をサポートする形で進めていくことができれば非常に良い。各党のみなさんの議論は重く受け止めたい。今日の議論を持ち帰り、党内でしっかり議論をしていきたい」と答えた。
議論では締約国に誠実な核軍縮交渉を義務付けているNPT第6条の意義を強調する意見も目立った。共産党の志位和夫委員長は「NPT体制を揺るがしている最大の問題は核保有国が第6条の義務を果たしていないことにある。日本政府は第6条に基づく一連の合意を再確認し、具体化し、実行すべきだということを、アメリカをはじめとした核保有国に迫るべきだ」と訴えた。また「核抑止論の見直しを」「北東アジア非核地帯構想の実現を」といった意見も、複数の議員から出された。
討論会にはカナダ在住の被爆者、サーロー節子さんも出席。「2000回以上の核実験で苦しんできたマーシャル諸島、カザフスタン、クリスマスアイランド、世界のいろいろな所に多くの忘れられた被爆者がいる。その人たちは核兵器国からまともな援助を受けておらず、今でも苦しんでいる」と被爆者の実態を紹介。「広島・長崎のわれわれと同じような医療の問題を抱えている人、環境破壊で苦しんでいる人、そういう人たちに核兵器禁止条約は援助の手を差し伸べようとしている。日本政府は世界の先頭に立って援助をしてほしい」とグローバル被爆者の問題を強調していた。
(『週刊金曜日』2023年8月18日号)