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「外国人」は市民じゃない?

崔 善 愛(チェ ソンエ)|2023年8月21日1:11PM

 日本にはいま約300万人の外国籍の人々が暮らしている。私もその一人だが、「外国籍だから外国人」と分類されることには違和感を抱いてきた。この国に生まれて60年以上、それでも「外国人」?

 7月25日、熊本市は検討していた自治基本条例改正案の市民の定義から、「外国籍を有する者を含む」の文言を削除した。

私のような在日「外国人」にとって地域社会でのよりどころは、「市民である」という自覚だ。「市民」はどんな国籍やバックグラウンドの人をも、ゆるく結ぶ言葉なのだ。

日本では、国際結婚をした両親を持つ子どもたちが、どちらか一方の国籍を選択させられる理不尽に苦しんでいる。

 私の親友は日本で生まれ育ち、30歳でイタリア人と結婚。以来30年イタリアに住むが、イタリア国籍にはせず、日本にいる親への思いなどから日本国籍を維持している。そして子どもたちは二重国籍だ。イタリアなど先進国が二重国籍を認めても、日本は認めていない。「帰化すればいい」という同化への圧力が日本は強い。

 熊本市は当初、外国籍の人の市政への参画を促そうと、この文言を入れようとした。ところが公募した意見の9割が反対。「外国人に参政権を認めたことにならないか」などという偏狭な意見に押し切られた。

 一昨年、東京・武蔵野市の住民投票に外国籍の人を含むとした条例案に対して、街宣車が押しかけ「外国人に乗っ取られるぞ」などというヘイトスピーチを展開、断念させられた経緯がある。パブリックコメントが真に住民の意見を表すのか、精査すべきではないだろうか。

 2021年に16年の任期を終えたドイツ連邦前首相アンゲラ・メルケルさんは、どの国よりも難民を率先して受け入れた。彼女は15年、記者会見でこう話した。

「第一に、政治的に迫害された人々には庇護を受ける基本権が適用されます。二つ目の原則はそれぞれの人間としての尊厳です。これはドイツ基本法(憲法)の第1条でまず私たちに課されている原則です。ドイツ国民であるかどうか、どこからどうして私たちのところにやって来たのか、そして最終的に難民申請が通る見通しがあるかどうかにかかわらず、一人一人の人間としての尊厳を重んじます。(ヘイト)デモを呼びかける人々に従わないでください。心の中には偏見、冷たさ、憎しみしかありません」

(『週刊金曜日』2023年8月18日号)

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